研究概要 |
カチオン/基質共輸送系の一つであるメリビオース輸送系について,構造と輸送機構および輸送制御機構の関係を明らかにすべく解析を行い,以下のような成果を得た。 これまでに解析されている大腸菌,ネブミチフス菌,クレブジエラの他に,エンテロバクターとシトロバクターにもメリビオース輸送系が存在することを見い出した。これらの細菌のメリビオース輸送系におけるカチオン共役について解析し,その特徴を明らかにした。現在エンテロバクターとシトロバクターのメリビオース輸送系遺伝子melBのクローニングを行っている。 私達が構造を明らかにしすでに報告している大腸菌とネズミチフス菌のmelB遺伝子について,遺伝子操作などにより種々の変異体を作成し,メリビーオース輸送タンパク質のアミノ酸残基の置換と輸送機能の変化の関係を明らかにした。こうして,カチオン共役に重要なアミノ酸残基,基質認識に重要なアミノ酸残基などが明らかになった。また,12個の膜貫通領域の内,いくつかのものについて,構造上の特徴や機能上の役割を明らかにした。 ホスホトランスフェラーゼ系による輸送制御については,制御を受けなくなったいくつかのネズミチフス菌変異株を分離・解析し,この輸送制御には,メリビオース輸送系のC末端領域が特に重要であることを明らかにした。この領域のAsp438,Arg441,lle445の三つの残基が特に重要であることがわかった。また,この領域はα-ヘリックス構造を取り,これらの残基はその同じ面に存在することが示唆された。すなわち,制御因子であるファクターIIIは,このα-ヘリックスの一つの面から結合することにより輸送タンパく質の機能を制御するものと思われる。
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