研究課題
国際学術研究
1)平成5年Johnson教授を招聘し、抗原構造、感染防御とワクチン開発、rRNA遺伝子構造と分子疫学などにつき討論した。また、静岡県立大学、国立予防衛生研究所でJohnson教授のライム病研究の現状と制圧に関するセミナーを開催した。増澤はJohnson研究室(アメリカ合衆国)で世界各地由来のライム病ボレリアで交差防御活性、ライム病関連ボレリアの分布調査と分類の必要性、ライム病の世界伝播機序について討論、情報交換した。更に、柳原は国際人畜共通伝染病会議(スロバキア)の「ライム病制圧」に関するWHOワークショップに招かれ、国際的共同研究の必要性を訴えた。柳原、増澤は引き続きWHO本部(スイス)、ヌ-シャテル大学(スイス)、パスツール研究所(フランス)などでライム病制圧につき討論を重ねた。2)日本分離の8株、欧米の3株に対する抗血清、並びに患者血清、疑診イヌ血清につき上記11株を抗原とするELISAを行いFujiP2株、IKA2株など日本のマダニ由来株が良好な結果を与えた。3)23S rRNA遺伝子のRFLP解析(リボタイピング)を世界各地の分離株について実施し、このリボタイピングがすでに提唱されているBorrelia burgdorferi、B.garinii、B.afzeliiの3遺伝種に良く対応し、ボレリアの分類に適用可能であることを示した。4)日、欧、米株のゲノムDNAを23S rRNA遺伝子のRFLP解析により、シュルツェマダニ由来株はB.garinii、B.afzelii、及びそのいずれにも分類されない新型に分類されることを示した。5)日本のヤマトマダニ由来ボレリアが形態、DNAの相同性、G+C含量、16S rRNA遺伝子のRFLP解析、単クローン抗体との反応性から新種であることを明らかにし、Borrelia japonicaと命名した。6)B.japonicaと他のライム病関連ボレリアとの鑑別を可能にする単クローン抗体を作製し、その性状を明らかにした。7)16S rRNA遺伝子プローブによるRFLP解析により4遺伝種の鑑別同定が可能であること、日本のシュルツェマダニ、エゾアカネズミ由来のボレリアがB.gariniiに帰属することを明らかにした。8)鞭毛蛋白遺伝子を標的とするPCRにより、培養菌、実験感染マダニとマウスから特異的増幅DNAを検出した。2段階PCRでは1個のボレリアでも検出可能で、ライム病の遺伝子診断と疫学調査に応用できることを示した。9)Osp A、B遺伝子に対するPCRによる増幅性、及び増幅産物のRFLP解析により臨床材料から直接B.japonica他3遺伝種を鑑別できることを示した。10)非近交系ddYマウス足蹠皮下に病原性ボレリアを接種することで特異的病変の誘発に成功した。心臓、膀胱からボレリア分離が可能であることから本モデルがワクチン開発研究に有用であることを明らかにした。Osp A、Bの性状を異にする株間では交差感染防御が成立しないこと、ワクチンとしては地域ごとに発生が予想される感染防御抗原型の菌株を用いなくてはならないことを示した。今後は、流行菌株の迅速同定法の開発が強く望まれるが、本研究で開発したOsp A、Osp B遺伝子を標的とするPCRは極めて有用である。11)日本のマダニ、患者由来ライム病ボレリアについて試験管内における各種抗生物質に対する感受性を調べ、欧米由来のB.burgdorferi、B.garinii、B.afzeliiのそれと比較した。ミノサイクリン、エリスロマイシン、アモキシシリンが強い殺ボレリア活性を示し、日本におけるライム病治療に有望であることが示された。また、日本分離株の薬剤感受性には、欧米分離株のそれと大きな違いはなく欧米からの抗生剤による治療報告は日本におけるライム病治療に有用な情報となることを明らかにした。
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