研究課題/領域番号 |
04044139
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
荻原 幸夫 名古屋市立大学, 薬学部, 教授 (70080166)
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研究分担者 |
蛭海 啓行 国際家畜疾病研究所, 細胞生物学部, 部長
藪 義貞 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (70080083)
能勢 充彦 名古屋市立大学, 薬学部, 助手 (60228327)
井上 誠 名古屋市立大学, 薬学部, 講師 (50191888)
竹田 忠紘 名古屋市立大学, 薬学部, 助教授 (90106253)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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キーワード | Trypanosoma / T.ivirax(IL1392) / T.bruci gambiense(Wellcome株) / 抗トリパノソーマ活性 / Gallic acid / 細胞致死活性 |
研究概要 |
アフリカ睡眠病は、宿主(ヒトや家畜)の血液中で分裂、増殖する単細胞の寄生虫(原虫)トリパノソーマによって引き起こされる熱帯病である。我々は、抗トリパノソーマ薬の開発を目指し、まず、トリパノソーマの生活環の中で「分裂型」から「非分裂型」への変態機序の解明を、植物花粉からのトリパノソーマ走化反応誘因物質の抽出、単離、構造研究を行うことにより試みた。さらに、薬用植物資源の中から抗トリパノソーマ活性を示す活性物質の検索を行った。 1.花粉由来誘因物質の検索:本学薬草園にて花粉量の多い植物8種から花粉を採集し、T.vivaxの走化反応を検討したところ、ヒオウギの花粉のみ走化反応が認められた。しかし、その反応性はフクシアに比較して若干弱いものであった。この走化反応は、スライドグラス上に花粉を置き、T.vivaxを感染させたマウスの尾静脈血を添加して観察するのであるが、その際に花粉をカバーグラスなどで緩やかに圧力を加えて、花粉を押し潰すとさらに強い走化反応が認められた。そこで、花粉を押しつぶした状態で走化反応を検討するうと、フクシア、ヒオウギ、インドハマユウ、チョウセンアサガオの花粉にも走化性を示すことが明らかとなった。次に、フクシン、ヒオウギ、インドハマユウ、チョウセンアサガオの花粉の水、及びメタノールエキスを作成し、走化反応を検討した。実験はビーズ(Gelatin Sepharose 4B)にエキスを3時間浸透させ、これをスライドグラス上で感想させた後、感染動物血液を添加するという方法を取った。その結果、フクシンの水エキスに特に強い走化反応が認められ、メタノールエキスにも走化反応が認められたが、他のエキスには認められなかった。また、このフクシアの花粉水エキスは、齧歯類の赤血球を凝集させることが明らかとなり、lectin様物質の存在が予想されたが、goatやcowの赤血球は凝集せず、その詳細については明らかではない。そこで、走化性と赤血球凝集活性を指標に、フクシアの花粉(やくも含めて)の水抽出物を分子量で分画したところ、分子量1000以下の画分には走化性活性は検出されず、そして、弱い赤血球凝集活性しか検出されなかった。一方、分子量1000-5000の画分には走化活性とかなり強い赤血球凝集活性が検出された。今後、今画分より走化性因子本体の単離と構造決定を行う予定である。 2.抗トリパノソーマ活性物質の生薬資源からの検索:天然物の抗トリパノソーマ活性を培養アフリカトリパノソーマ(Trypanosoma brucei bricei IL Tat 1.4 done)を用いてin vitroの実験系で調べたところ没食子酸に強力な抗トリパノソーマ活性が認められた。この抗トリパノソーマ活性は原虫増殖抑制ではなく、原虫致死作用によるものであった。我々はすでに没食子酸が哺乳類癌細胞に対して、正常細胞に比べかなり選択的に細胞の縮小、染色体DNAの凝縮、細胞膜の平坦化などアポトーシスに特徴的な形態変化を示すこと明らかにしてきた。さらに、没食子酸はある種の癌細胞(HL-60RG etc)にアポトーシスの生化学的マーカーである染色体DNAのヌクレオソーマル単位の断片化を誘導することを明らかにしてきた。そこで、没食子酸のトリパノソーマ殺活性の作用機序を検討した。没食子酸のトリパノソーマ致死活性は10μg/mlの濃度で2時間以内、6μg/mlの濃度で6時間以内にトリパノソーマ(10^4-10^6/ml)を死滅させるほど強力なものであった。このトリパノソーマ致死活性はトリパノソーマ数依存性を示し、10μg/mlにおける致死活性はトリパノソーマ数10^6/mlまでは効果が見られたが、10^7/ml以上の濃度のトリパノソーマを用いた実験ではトリパノソーマ致死活性は観察されなかった。また、没食子酸処理トリパノソーマよりDNAを抽出し、アガロース電気泳動にかけてDNAの断片化を調べたが、DNAの断片化は検出されなかった。現在、没食子酸によるトリパノソーマ致死活性の作用機序に関してさらに詳細な検討を行っている。
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