研究課題/領域番号 |
04044140
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
渡辺 稔 名古屋市立大学, 薬学部, 教授 (50012638)
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研究分担者 |
MICHAEL Wals カルガリー大学, 医学部, 教授
WAYNE Giles カルガリー大学, 医学部, 教授
村木 克彦 名古屋市立大学, 薬学部, 助手 (20254310)
今泉 祐治 名古屋市立大学, 薬学部, 助教授 (60117794)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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キーワード | イオンチャネル / 心筋 / 平滑筋 / カリウムチャネル / カルシウムチャネル / 4級アンモニウム塩 / 完動脈 / 薬物選択性 |
研究概要 |
1.心筋・平滑筋の早期不活性化電流のアラキドン酸による制御の違い ヒトやウサギ心房筋細胞の活動電位の形状は刺激頻度に強く依存する。これは活動電位の早期再分極相を形成する早期不活性化K電流の大きさが刺激頻度依存性を持つからである。一方、モルモット門脈、精嚢、精管、結腸、尿管、胃底部などの平滑筋においても早期不活性化K電流の存在することがわかってきた。心筋・平滑筋の早期不活性化K電流は電流としての性質は、活性化・不活性化の電位及び時間依存性や4-aminopyridineに感受性が高いなどの点で非常に似通っている。しかし細胞での機能は心筋と異なり再分極電流としてよりも脱分極の初期にCa電流と拮抗する電流として働き、活動電位の発生を抑制する、あるいは発射のタイミングを調節する。アラキドン酸が各種平滑筋細胞において1μM低濃度で同じ様に早期不活性化K電流を50%抑制する事を見出した。心房筋細胞と比較したところ、ウサギ心房筋では抑制に30μM以上の高濃度を必要とするため、生理的役割は平滑筋において遥かに重要であると考えられる。ウサギ心房筋だけでなく、早期不活性化K電流を持つ数種の動物の幾種かの心筋において検討したが、同様の結果であった。化学伝達物質を含む多くの生理活性物質がフォスフォリパーゼA2を活性化しアラキドン酸を遊離するからである。尚、アラキドン酸の代謝物であるプロスタグランディンE1とF2αには早期不活性化K電流抑制効果はなかった。またアラキドン酸による抑制はシクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、あるいはスーパーオキサイドデスムターゼの阻害薬で影響を受けなかったが、リン脂質依存性蛋白燐酸化酵素(Cキナーゼ)阻害薬により一部抑制された。心房筋ではCキナーゼの活性化により早期不活性化電流が減少することが知られているので、アラキドン酸による修飾が平滑筋で強いのは興味深い(投稿準備中)。 2.心筋・平滑筋遅延整流型K電流のClass III抗不整脈による修飾の違い Class III抗不整脈薬は心筋を抑制することにより活動電位の持続時間と不応期を延長させる。心筋細胞の膜電流の内では遅延整流型K電流を選択的に抑制するとされているが、血管などの平滑筋細胞の遅延整流型K電流に対する作用は検討されていない。特に冠状動脈平滑筋と心筋の遅延整流型K電流のClass III感受性の違いを集中して検討した。ウサギ心房筋やモルモット心室筋細胞の遅延整流型K電流は、Class IIIのE-4031(1μM)やMS-551(10μM)によってそれぞれ80%以上・約60%が抑制された。一方、ブタ冠状動脈平滑筋細胞の遅延整流型K電流は30μMのE-4031や100μMのMS-551で若干の抑制が観察されたにとどまった。しかしClass Iの抗不整脈薬であるが遅延整流型K電流も抑制する事が知られているキニジンによって心筋・平滑筋の遅延整流型K電流はNa電流抑制に有効な濃度(1μM)において同程度(約50%)抑制されることがわかった。冠状動脈平滑筋の遅延整流型K電流を4-aminopyridineで抑制すると刺激物質による収縮が著しく増大されたり、自動運動が発生したりするので、心筋細胞の遅延整流型K電流に対する抗不整脈薬の選択性は充分注意されなければならない(投稿準備中)。 3.4級アンモニウム塩による平滑筋感受性増大 心筋と平滑筋細胞の収縮機構の違いの一つとしてそのCa動員機構の違いが挙げられる。心筋ではイノシトール三燐酸(IP_3)を2次伝達物質とする筋小胞体からのCa遊離はあまり生理的意義があまり認められていないが、平滑筋ではその収縮の中心的役割を果しているとされている。小胞体からのIP_3によるCa遊離はKの小胞体内への流入と連関しているとされており脳の小胞体ベジクルからのIP_3によるCa遊離がKチャネル拮抗作用を持つ4級アンモニウム塩によって阻害されることが報告されている。従って、心筋と平滑筋でのIP_3によるCa遊離機構に4級アンモニウム塩がどのように作用するか比較検討する事を試みた。ところが脳では最もIP_3によるCa遊離を抑制すると報告されているtetrahexylammoniumにより平滑筋においては収縮系のCa感受性が著しく上昇し、その作用はCa遊離抑制作用よりもはるかに大きいことが明らかとなった。そのCa感受性増大の機序にはCa-カルモジュリン、ミオシン軽鎖キナーゼの活性・機能上昇さらにミオシン脱燐酸化の抑制は含まれていないことが明らかとなった(Pflugers Archiv)。
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