研究分担者 |
中務 真人 大阪医大, 医学部, 助手 (00227828)
小山 高正 川村学園女子大, 教養部, 助教授 (20143703)
鈴木 一憲 福島県立医大, 医学部, 講師 (00154526)
寺尾 恵治 国立予防衛生研, 筑波霊長類センター, 主任研究官 (30109920)
柵木 利昭 岐阜大学, 農学部, 助教授 (70014115)
|
研究概要 |
昨年度(1991年夏)の予備調査から,コンゴ・ゴリラ保護センター設立以前および設立過程のゴリラ孤児の死因は,親の密猟殺によるストレスからの神経性拒食症と臨床病理学的に診断してきた。 本年度(1992年夏)には,国立コンゴ動物園内にジェーン・グドール研究所のチンパンジー孤児院が設立され,コモンチンパンジーが保護養育されていた。コンゴ・ゴリラ保護センターのゴリラ孤児院でのリハビリテーション効果から,神経性拒食症は劇的に改善されていた。臨床検査により,一部のゴリラからサルモネラ菌,マラリア原虫,糞線虫をはじめ数種の寄生虫が検索されたが,投薬処置により臨床症状は改善されていた。1992年6月のヒトのインフルエンザ流行とともにコモンチンパンジー,ピグミーチンパンジーおよびニシローランドゴリラの10数頭が羅患,コモンチンパンジーとピグミーチンパンジー各1頭と5頭のニシローランドゴリラが死亡した。8月には,4頭のニシローランドゴリラがポリオ(急性灰白髄炎)に羅患,2頭が死亡し,恢復した2頭は後肢麻痺の後遺性を持つが,群れの中でのリハビリテーションを実施している。インフルエンザとポリオで死亡した類人猿孤児9頭の剖検および病理組織学的検索から軽い大葉性肺炎あるいは肺水腫を認める以外,他の臓器には死に至る顕著な変化は認められなかった。新しく保護されたゴリラ孤児および飼育担当者にはポリオワクチンをはじめ,コンゴにおけるヒトの感染症に対応したワクチン接種を実施している。他方,比較解剖学的研究の標本処理として,血管X線造影可能な潅流固定法を全死亡個体に採用,広領域利用可能な標本保存処理を実施してきた。
|