研究分担者 |
稲葉 章 大阪大学, 理学部, 講師 (30135652)
STEIGENBERGE ユウ.イイ. ラザフォードアプルトン研究所, グループリーダー
金谷 利治 京都大学, 化学研究所, 助教授 (20152788)
松尾 隆祐 大阪大学, 理学部, 助教授 (00028185)
加倉井 和久 東京大学, 物性研究所, 助教授 (00204339)
梶 慶輔 京都大学, 化学研究所, 教授 (00026072)
伊藤 晋一 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助手 (00221771)
新井 正敏 神戸大学, 理学部, 助教授 (30175955)
古坂 道弘 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助教授 (60156966)
池田 進 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助教授 (80132679)
三沢 正勝 新潟大学, 理学部, 教授 (80005941)
神山 崇 筑波大学, 物質工学, 助手 (60194982)
浅野 肇 筑波大学, 物質工学, 教授 (90005934)
柴田 薫 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (60183836)
山田 和芳 東北大学, 理学部, 助教授 (70133923)
神木 正史 東北大学, 理学部, 助教授 (30004451)
遠藤 康夫 東北大学, 理学部, 教授 (00013483)
渡辺 昇 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 教授 (40005286)
FURUSAKA M. National Laboratory for High Energy Physics
IKEDA S. National Laboratory for High Energy Physics
MISAWA M. Niigata Univ.
ASANO H. Univ.of Tsukuba
SHIBATA K. Tohoku Univ.
KOHGI M. Tohoku Univ.
YAMADA K. Tohoku Univ.
ENDOH Y. Tohoku Univ.
MATSUO T. Osaka Univ.
ARAI M. Kobe Univ.
KAKURAI K. Univ.of Tokyo
KAJI K. Kyoto Univ.
KANAYA T. Kyoto Univ.
ITOH S. National Laboratory for High Energy Physics
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研究概要 |
本研究は、「連合王国科学工学会議(SERC)及び日本高エネルギー物理学研究所(KEK)間のラザフォード・アプルトン研究所(RAL)スポレーション中性子源(ISIS)を用いた中性子散乱研究に関する協定」(1986年12月締結)に基づく研究を実施することを目的としている。この協定に基づき、我々はわが国の予算により高性能チョッパー型分光器MARIをISISに設置し(平成元年度)、これまで既存の中性子源利用によっては達成できなかった新しい中性子散乱研究の開拓をめざして、1992年度から本格的な実験研究を開始した。本年度は、MARIを中心とした14課題の実験を実施したが、数多くの成果が得られた。顕著な成果は以下の通りである。 高温超伝導体La_<1.85>Sr_<0.15>CuO_4単結晶の磁気揺動の観測を行い300meVまでに及ぶシグナルの観測に成功した。このような大きなエネルギースケールの磁気揺動は、同じ銅酸化物超伝導体のYBa_2Cu_3O_7とは大きく異なっており、高温超伝導発現と磁気揺動の関連を研究する上での重要な発見となった。 一次元反強磁性体の磁気励起に及ぼす量子効果の研究は統計物理学の基本問題として重要な課題の一つである。スピン値が3/2の系CsVCl_3の一次元鎖方向の磁気励起を測定することによって、ゾーン境界の励起エネルギーが75meVをとることが分かったが、この値は古典的なスピン波論で予測される値の1.26倍である。また、励起の線幅は古典論で予測される値の2,4倍とう異常を示すことが判明された。線幅の温度変化の詳細を現在解析中であり、スピン値の増大に伴う量子論から古典論へのクロスオーバーについての理解が進みつつある。 水素結合物質KHCO_3の水素の波動関数とポテンシャルを求めるための実験が行なわれ、水素の励起状態(125meV,230meV、320meV)の運動量空間での強度分布の測定に成功した。これで得られた散乱関数のフーリエ変換から、水素の励起状態の波動関数の対称性、また、それを再現するポテンシャルの決定作業が進行している。 典型的非質晶合金(例えばNi_<40>V_<60>)では、非晶化に伴い、局所的な四面体基本構造ユニットが互いに、結晶相での面共有型から頂点共有型に変化するものと予想されている。このような変化は原子振動の相違を伴うので、MARIでの動的構造因子の測定が決め手となる。この測定によって、非晶質合金において初めて、分散の無い励起状態(12meV)が発見された。このことから、四面体を基本とした二十面体構造の存在が示唆されており、原子振動のダイナミクスの情報から原子配列の詳細が決定されつつある。 以上はMARIを用いた実験成果の一部であるが、他の分光器を使用した共同研究によって以下のような興味深い成果が得られている。 高エネルギー分解能分光器IRISで、4μeVという高い分解能の実験条件のもとで、フラクタル構造をもつパーコレーションネットワーク上を拡散するスピンの運動を支配する異常拡散則の観測に初めて成功した。一様な系での粒子の拡散則はすでに確立されているが、フラクタル格子上を拡散する粒子の運動を明らかにした最初の実験である。 典型的遍歴磁性体Mn_<3-x>Si_x(x=0-1.2)の低温での磁気秩序状態は、x=0では横波正弦波、x=0.2-1.2では反強磁性構造である。局所的にはMnがBCC構造をとることから、スピン密度波が観測される例として有名なBCC-Crとの比較に大きな興味がもたれている。高エネルギー励起用チョッパー分光器HETを用いたMn_<2.8>Si_<0.2>単結晶の実験によって、スピン波はエネルギーが30-40meVの付近で急速にダンピングするという現象が見いだされた。磁気転移以上の温度で観測された異常に強い常磁性散乱とともに、この系の磁性が明らかにされようとしている。
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