• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

1993 年度 研究成果報告書概要

古代日韓における非鉄金属製品の成分組成に関する比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 04044161
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分共同研究
研究機関国立歴史民俗博物館

研究代表者

杉山 晋作  国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助教授 (30150022)

研究分担者 李 賢珠  釜山直轄市立博物館, 学芸研究室, 学芸研究士
鄭 光龍  韓国国立文化財研究所, 保存科学研究室, 研究員
姜 炯台  韓国国立文化財研究所, 保存科学研究室, 専門委員
齋藤 努  国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (50205663)
田口 勇  国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 教授 (50192159)
KANG Hyung tae  National Research Institute of Cultural Properties, Conservation Scientist
CHUNG Kwang Ryong  National Research Institute of Cultural Properties, Conservation Scientist
LEE Hyung Joo  Museum of Pusan, Curator
研究期間 (年度) 1992 – 1993
キーワード古墳 / 古代製品 / 装身具 / 武器 / 武具 / 馬具 / 金銅技術 / 金属元素
研究概要

1.本研究は、古代の日韓とくに日本の古墳時代と韓国の三国時代における金属工芸技術と製品の交流に関わる問題をより明確にしようとして実施したものである。当時の韓国と友好関係にあった日本は、金属製品とその原材料および技術者を導入した。しかし、「日本書紀」や朝鮮半島の「三国史記」にみられるように、折々の複雑な国際情勢が反映して、日本と韓国の新羅・百済・伽耶諸国との交流は一様でなく、これに対応するかのように日本へ渡来した製品や技術も多様である。そこで、日韓両国の古墳出土金属製品を対象にして、その成分組成と技法を比較検討することにより、記録に残されなかった技術交流の系譜を検討しようとした。
2.研究分担については、韓国側は、国立文化財研究所が中心となって国営調査による出土品から分析試料を採取するとともに自然科学的分析を担当したほか、釜山周辺の大学や博物館などの研究機関が大学調査による出土品からの分析試料の収集を支援した。日本側は、国立歴史民俗博物館が日本国内出土品からの分析試料の収集を担当した。自然科学的分析の方法については、主としてX線マイクロアナライザー付走査型電子顕微鏡を用いて金銅製品を観察して、組成元素の抽出や元素分布状態の視覚化を行ない、別に鉛同位体測定も実施した。
3.自然科学的分析の結果を踏まえた基礎的研究成果は以下のとおりである。
(1)鍍金製品の多くは、銅板の表面に金の薄膜を固定させた金銅と呼ばれるものであり、冠・大刀装具・武具・馬具の飾り板に用いられた。稀に、大刀装具の銀板に鍍金したものがあるが、これは金と銀の色調対比を強調したものである。また、この金銅板は馬具など強度を要する製品では鉄地板の装飾として用いられている。
(2)金膜の品質については、厚さ10ミクロンまでのものがほとんどで日韓で極端な差異はない。しかし、金の純度は純金に近い資料と銀が含まれている資料がある。純金や純銀製品が多い韓国の新羅地域では金銅製冠の金膜が純金に近く高度な精製技術をもっていたことが推定される。銀を多く含む金膜は銀を意識的に混入させたと推定されるが、少量の銀を含む金膜は原材料の金が本来的に銀を含有していた可能性があるので、自然産出砂金を収集してその分析データを検討中である。一方、馬具などの装飾板として用いた金銅板はほとんどが金膜に銀をふくむ。この品質の差異は、地域による特色だけでなく、製品の種類によることも想定されるので、その歴史的背景はさらにデータを集積した後に総合的に推測することになる。
(3)金膜の色調には、赤色がかった金色と白色がかった金色の2種があり、前者は純金で後者は銀が含まれるからであると言われていた。傾向としては、その見解が是認される。しかし、白色がかった金色を呈する資料の中には金膜中に通常以上の水銀を含む例がある。これは鍍金作業での加熱が不足のために金アマルガムの水銀が充分に蒸発せず残存したためその白色が色調に反映したものと判断される。したがって、肉眼的な色調観察のみで金膜の銀含有の有無を推定せず、自然科学的分析による正確な把握を必要とする。
(4)地板は銅板とするものがほとんどである。しかし、その銅板も純銅に近いもののほか、鉛・錫・アンチモン・銀などを含むものがあって、その構成も多様である。それらが意識的な混入によるものか否かについては、再現実験を実施するなどで確認中である。
(5)鍍金は銅板に施すのが一般的であり、鉄板には施すことができないために金銅板で被覆する方法が採用されていたと言われる。しかし、鉄板に特殊な金属を塗布した後、金アマルガム法で鍍金するという特殊な技法を用いた資料を確認した。
(6)青銅製品に含まれる鉛の同位体比を測定した結果、伽耶地域出土の容器は形態の考古学的検討と同じく産地を中国と推定できた。また、日本製かと言われてきた武器武具の部品で最近同じ伽耶地域から多量に出土してその製作地に問題を投げかけた資料の鉛産地が朝鮮半島でなく、これもまた中国と推定できた点は注目される。

  • 研究成果

    (10件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (10件)

  • [文献書誌] 田口勇・杉山晋作・齋藤努: "蕪木5号墳出土金銅製遺物の自然科学的研究" 国立歴史民俗博物館研究報告(日本). 45. 49-61 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 杉山晋作・田口勇・齋藤努・金洙南: "嶺南出土金銅製品の鍍金技法(予定)(ハングル版)" 嶺南考古学(韓国). (予定). (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 杉山晋作・田口勇・齋藤努・申敬〓・安佐皓: "伽耶における青銅製品の原材料産地(予定)(ハングル版)" 伽耶考古学論叢(韓国). (予定). (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 杉山晋作・田口勇・齋藤努・宋桂鉉: "特異な鍍金技法(予定)(ハングル版)" 保存科学研究(韓国). (予定). (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 杉山晋作・田口勇・齋藤努・姜炯台・鄭光龍・李賢珠・全玉年: "古代日韓の金銅技術(予定)" 保存科学研究(韓国)考古学と自然科学(日本). (予定). (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] Taguchi Isamu, Sugiyama Shinsaku, Saitou Tsutomu: "Natural Scientific Research on Gilt Remains excavated from Kaburagi Tumulus No,5" Bulletin of the National Museum of Japanese History. 45. 49-70 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Sugiyama Shinsaku: "Technique of Gilt Remains excavated from Yongnam Area" Yongnam Archaeological Review. (intended). (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Sugiyama Shinsaku: "The Land produced Materials of Bronze Remains excavated from Kaya Area" Kaya Archaeological Review. (intended). (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Sugiyama Shinsaku: "Peculiar Technique of Ancient Gilding" Researches in Conservation. (intended). (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Sugiyama Shinsaku: "Gilding Technique in Ancient Japan and Korea" Archaeology and Natural Science. (intended). (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より

URL: 

公開日: 1995-02-07  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi