科学技術を利用した文化財研究法の開発

1994 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 04044163
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 東京国立文化財研究所
• 研究代表者: 西川 杏太郎 東京国立文化財研究所, 所長 (70000304)
• 研究分担者: コート L.A. スミソニアン研究機構, フリアー美術館, 研究員 ; ヴァンディバ P. スミソニアン研究機構, 保存分析研究所, 研究員 ; チェイス W.T. スミソニアン研究機構, フリアー美術館・保存科学部, 部長 ; ヴァン・ゼルスト L. スミソニアン研究機構, 保存分析研究所, 所長 ; 馬淵 久夫 作陽短期大学, 教授 (30011498) ; 青柳 洋治 上智大学, アジア文化研究所, 教授 (60146800) ; グッドマン ディーン マイアミ大学, 音響地質研究所中島分室, 副所長 ; 斎藤 孝正 文化庁, 文化財保護部・美術工芸課, 文化財調査官 ; 西村 康 奈良国立文化財研究所, 埋文センター, 室長 (80000488) ; 村上 隆 奈良国立文化財研究所, 埋文センター, 主任研究官 (00192774) ; 沢田 正昭 奈良国立文化財研究所, 埋文センター, 室長 (20000490) ; 佐野 千絵 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 主任研究官 (40215885) ; 三浦 定俊 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 部長 (50099925) ; ZELST Lambertus van Director General, Conservation Analytical Laboratory, Smithsonian Institute ; DEAN Goodman Miami University ; SAITO Tsutomu Senior Specialist for Cultural Properties, Fine Arts Division, Cultural Properti ; CHASE W.thomas Director, Conservation Analytical Laboratory, Smithsonian Institute ; CORT Louise a. Researcher, Freer Gallery of Art, Smithsonian Institute ; VANDIVER Pamela b. Researcher, Conservation Analytical Laboratory, Smithonian Institute
• 研究期間 (年度): 1992 – 1994
• キーワード: 遺跡探査 / ミシシッピアン / 陶磁器 / 緑釉 / 銅同位体比 / 青銅器 / 中国

研究概要

本研究は、東京国立文化財研究所を中心にして、日本の文化財科学の研究者がスミソニアン研究機構の研究者と共同で、3つの分野に分かれて文化財の科学的研究法を確立することを目的としている。その内容は(1)アメリカ大陸に於ける遺跡探査、(2)青磁と緑釉のアジアに於ける伝播、(3)青銅器の起源と伝播の3つであり、それぞれについて研究実績の概要を説明する。
(1)遺跡調査法開発班
1993年8月22日から9月5日にかけて実施した、北アメリカに於ける遺跡探査の調査結果を、アメリカ側の共同研究者と共に討議してまとめた。それぞれの遺跡について概略を述べると次のようになる。
(1)Camp Mound遺跡(IIIinois州 Kampsville)
9〜11世紀に属するNative Americanの遺跡であるが、第6、7遺跡を電気・磁気・地中レーダー探査した結果、従来別々ものと判断されていたこの2つの遺跡は本来一つの遺跡であると考えられた。
(2)Shawnee Creek遺跡(Missouri州 Eminence)
同じく11世紀頃の遺跡である。試掘トレンチの南側に新たな別の遺跡が存在することを明らかにした。
(3)Spiro遺跡(Oklahoma州 Spiro)
7世紀から15世紀までの広い時代に亘る遺跡である。上の二つの遺跡に比べて、それほど明確に遺跡の形を捕らえることができなかったが、神殿あるいは何かの建物が存在する可能性を指摘できた。
以上の研究成果をアメリカ側研究者と共同で、第59回アメリカ考古学会において発表した。
(2)青磁・緑釉研究班
国内産の陶磁器として、唐津古窯と瀬戸の陶磁器および各地の緑釉陶磁器の分析を行った。唐津古窯と瀬戸についてはX線スキャナーやX線マイクロアナライザーを用いて、胎土の組織観察、成分分析、釉薬の成分分析を行い、中国や韓国産の陶磁器と比較を行い、胎土の成分に違いがあることを明らかにした。緑釉については鉛同位体比質量分析を行い、日本産の鉛を釉薬に用いていることを明らかにした。極めて興味深いことは、すべての緑釉陶器について、鉛同位体比がほとんど同じであることで、これは緑釉が一つの場所から供給されていたことを示し、官営窯などが当時存在していた可能性を暗示するものであり、歴史的に大きな発見である。この成果は第11回日本文化財科学会大会で報告した。
この他、北部、中部ベトナムから出土した12〜16世紀の陶磁器について分析を行った。その結果、ベトナムの青磁は中国南部地方の窯、特に龍泉窯と類似した分析値を示し、中国との文化の交流を示唆している。ただし焼成温度は低く、技術的な差がみられる。この成果は第12回日本文化財科学会大会で報告予定である。
(3)青銅器研究班
雪野山古墳出土の三角緑神獣鏡の同型鏡がワシントンのフリア-美術館にあるので、形状、成分などについて双方の比較を行った。またフリア-美術館とカナダ、ロイアルオンタリオ美術館の所蔵する中国青銅器について調査を行い、詳しい調書を作成した。また銅同位体比分析は特に中国の三星堆遺跡から出土した青銅器について行ったが、従来分析を行ってきた中国産の青銅器に比べて銅同位体比がたいへん低い値を示した。この値は殷嘘から出土する早期の青銅器と類似の値を示している。この時代の商の勢力と文化の広がりを示唆するもので、古代中国の歴史研究に取って極めて大きな事実が明らかになった。この成果は1995年2月発行の文物に掲載された。

研究成果

• [文献書誌] 金 正輝他: "广〓三星堆遺物抗青銅器的鉛同位素比値研究" 文物. 2号. 80-85 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 斎藤 努: "陶磁器の胎土および釉薬の分析化学的研究" プレプリント(第18回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会-文化財保存における分光学的方法). 18-27 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Nishimura Yasushi: "Development of State-of-The Art Geophysical Equipment and Testing for a Joint U.S./Japan Study of Native American Archaeological Sites" ABSTRACTS OF THE 59th ANNUAL MEETING(Society for American Archaeology). 105 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Goodman Dean: "Joint U.S./Japan Research Project to Pcomote the Use of Hi-Tech Ground Penetrating Radar Equipment and Advanced Data Processing for the Study of Native American Archaeology" ABSTRACTS OF THE 59th ANNUAL MEETING(Society for American Archaeology). 56 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Jin Zhengyao: "A Study on Lead Isotope Ratio of Sanxingdui Pit-burial Bronzes" WENWU (Cultural Relics). No.2. 80-85 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SAITO Tsutomu: "Chemical Study on Clay and Glaze of Ceramics" PREPRINTS (The 18th International Symposium on the Conservatior and Restoration of Cultural Property). 18-27 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Nishimura Yasushi: "Development of State-of-The Art Geophysical Wquipment and Testing for a Joint U.S./Japan Study of Native American Archaeological Sites" ABSTRACTS OF THE 59th ANNUAL,MEETING (Society for American Archaeology). 105 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Goodman Dean: "Joint U.S./Japan Research Project to Promote the Use of Hi-Tech Ground Penetrating Radar Equipment and Advanced Data Processing for the Study of Native American Archaeology" ABSTRACTS OF THE 59th ANNUAL,MEETING (Society for American Archaeology). 56 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より