研究課題/領域番号 |
04044175
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
竹内 郁夫 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 所長 (90025239)
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研究分担者 |
BONNER John プリンストン大学, 名誉教授
SARAN Shweta インド科学研究所, 博士研究員
WILLIAMS Jef 英国帝国がん研究所, 教授
前田 靖男 東北大学, 理学部, 教授 (50025417)
岡本 浩二 京都大学, 理学部, 助教授 (10029944)
田坂 昌生 京都大学, 理学部, 助教授 (90179680)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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キーワード | 細胞分化 / パターン形成 / 遺伝子発現 / 細胞周期 / 細胞内情報伝達 / 細胞性粘菌 |
研究概要 |
細胞性粘菌の発生系では、細胞が集合して組織を形成すると、2種類の細胞(予定柄および予定胞子細胞)が組織の大きさに関係なく一定の割合で分化し、それぞれ組織の前後を占める。この分化パターン形成の調節機構を明らかにする目的で研究を行い、次の成果を得た。 1.研究分担者のJ.Williamsが開発したアクチン・ベイサル・プロモーターをもつベクターを用いて予定胞子細胞に特異的に発現される遺伝子Dp87の転写を制御するシス領域について調べ、予定胞子細胞に特異的で転写を正に制御する領域が4箇所、予定胞子以外の細胞で転写を負に制御する領域が1箇所、細胞型に関係なく転写量を増大させる領域が1箇所存在することを明らかにした。 2.予定柄細胞への分化過程が4つの段階に分画され、それぞれの段階には異なった種類の細胞間シグナルが順次作動することによって段階的に分化が進められていることを明らかにした。従来から柄細胞分化に必要なことが知られていたcAMPは第2段階に、またDIFは第3段階に作用することを見出した。第3段階においてはさらに細胞から分泌される未知の低分子物質がシグナルとして作用し、柄細胞特異的遺伝子ecmAやecmBの発現を誘導した。さらに、第2段階において必要とされるcAMPは第3段階においてecmAおよびecmBの発現を同程度に阻害した。このことは、両遺伝子の示差発現がcAMPによって調節されるとする従来の仮設が誤りであることを示している。一方、第3段階においてprotein kinase A(PKA)の賦活剤である8-Br-cAMPを与えると、ecmBの特異的な発現が誘起される。このことは、ecmA/Bの示差発現にPKAの活性化が関与している可能性を示唆している。ecmB遺伝子の上流域に種々の長さの欠失をもつJ.Williamsの作製した変異株を用いて、ecmBの発現における8-Br-cAMPの作用点を決定する予定である。 3.細胞周期依存的な細胞分化・パターン形成の機構について、精度の高い同調培養系と細胞マーカーとしてβ-ガラクトシダーゼを常時発現する形質転換細胞を用いて詳細に検討した。その結果、(1)細胞周期G2期内のPS点(増殖/分化の分岐点)の直前で飢餓処理された細胞はまづ集合中心として機能したのち、移動体形成後はその後部の予定胞子細胞域に選別されること、および(2)PS点直後で飢餓処理された細胞は遅れて集合に参加するが、移動体の前部の予定柄細胞域に選別されることを明らかにした。さらに、細胞周期と細胞分化との相関を探るために、細胞マーカーとしてβ-グルクロニダーゼを常時発現するベクターおよび予定柄あるいは予定胞子特異的遺伝子(ecmA,Dp87など)のプロモーター領域とβ-ガラクトシダーゼとの融合遺伝子をもつベクターの両方とで細胞を形質転換し、これらを合わせもつ二重形質転換株を得た。現在までに、いくつかの株が得られているので、その中から解析に最も適するものを選択中である。 4.粘菌細胞の細胞質内遊離カルシュウムを測定するために、クラゲのアポエクオリン遺伝子を形質導入した細胞をつくり、それを用いて発生過程における細胞質カルシュウムイオンの量的変化とサイクリックAMP刺激を与えた場合の細胞質カルシュウムイオンの変化を調べた。その結果、(1)成長期終了後集合期に至る過程で細胞質カルシュウム量が著しく増加すること、および(2)成長期以外の細胞はサイクリックAMP刺激に対して細胞質カルシュウムの一過性の増加を示すことがわかった。また、移動体における予定細胞の分化に伴って、予定柄細胞は予定胞子細胞に比べて二倍量の細胞質カルシュウムを含有するとともに、サイクリックAMP刺激に対して三倍量の反応性を示すことが判明した。
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