研究分担者 |
野田 洋一 京都大学, 医学部, 助教授 (50115911)
MANFRED J Lo カルガリー大学, 生物学教室, 助教授
JAMES L Mall コロラド大学, ハワードヒューズ医学研究所, 教授
田中 実 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (80202175)
山下 正兼 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (30202378)
吉国 通庸 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (50210662)
|
研究概要 |
本研究の初年度である平成4年度は,脊椎動物の卵成熟の最終制御因子である卵成熟促進因子(MPF)の卵成熟誘起ホルモン(MIH,魚類では17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン,17α,20β-DP,両生類ではプロゲステロン)による活性化の分子機構について日本,米国,カナダの研究者で共同研究を実施した。 キンギョでは,17α,20β-DPを処理する前の未成熟卵(卵黄形成はすでに先了し、17α,20β-DPを処理することにより成熟する卵)では,MPFの2つのコンポーネントの一つであるcdc2キナーゼ(分子量,35kDa)はすでに存在する。しかし,MPFのもう一方の構成分であるサイクリンBは存在しない。invitroで17α,20β-DPを処理することにより3〜5時間でサイクリンBが新しく合成され,その直後にすでに卵内に存在するcdc2キナーゼ(35kDa)と複合体を形成するが,この時新しく34kDa cdc2キナーゼが出現する。この34kDa cdc2キナーゼは35kDaキナーゼのスレオニン(161番目)にリン酸化が起こったものである。また,複合体ではサイクリンBのセリンもリン酸化されるが,キンギョのサイクリンBのトランケートを用いた実験からこのサイクリンBのセリンのリン酸化はMPFの活性化とは直接には関しないことが明らかになった。一方,ゼノパス(両生類)では,cdc2キナーゼとサイクリンBの両方共すでにプロゲステロン処理前の未成熟卵で存在し,しかもこの2つのコンポーネントはすでに複合体を形成している。プロゲステロン処理より,cdc2キナーゼのタイロシン(15番目)に脱リン酸化が起こり,MPFは活性化する。ゼノパスのMPFの活性化とスレオニンのリン酸化との関連は不明である。このように,MPFの化学構造及び活性は魚類と両生類と極めて類似したものであるが,ホルモンによる活性化の機構が著しく異なることが本研究で明らかになった。
|