研究課題/領域番号 |
04044184
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研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
佐藤 博子 国立予防衛生研究所, 細菌部, 主任研究官 (80100080)
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研究分担者 |
松浦 善治 国立予防衛生研究所, ウイルス第二部, 室長 (50157252)
山河 芳夫 国立予防衛生研究所, 細胞化学部, 主任研究官 (50100102)
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キーワード | PDT融合ワクチン / 融合遺伝子 / 百日咳毒素 / 破傷風毒素 / 防御免疫原性 |
研究概要 |
百日咳毒素(PT)は、S1-S5の5種の異なるサブユニットから成る6量体である。中でもS1はPTの酵素活性と共に防御抗原性を担っている重要なサブユニットである事をモノクローナル抗体を用いた解析で明らかにしてきた。百日咳ジフテリア破傷風融合抗原作製を目的とした本プロジェクトにおいて、本年度の実験では百日咳抗原としてS1を、破傷風抗原としてガングリオシド結合性を保持し、且つ免疫防御抗原性をも持っているフラグメントC(TC)を選んだ。S1遺伝子はADP-リボシラーセ活性を発現しない変異を入れ、TC遺伝子上流に融合させた。即ちN末側に百日咳、C末側に破傷風抗原が発現されるような融合遺伝子を作出し、大腸菌で発現させた。産出された融合抗原はPAGE,ELISA、ゲル内沈降反応でPTとTCの両抗原性を備えた単一分子である事が確認された。そこで本融合抗原を用いてマウスを免疫し、抗体産生能を確認すると共にPT及び破傷風毒素(TT)に対する毒性中和活性、防御活性を測定した。PTに対してはCHO細胞集合活性に対する中和能を調べたが、中和は認められなかった。また、免疫マウスに百日咳菌強毒株18323株を脳室内投与し防御能を調べたところ、延命効果を認められたが2週間後には全例死亡した。免疫マウスの抗S1抗体価から換算すると、この防御活性は弱いとは言えず、S1部位の免疫原性を高める工夫が必要である。一方、TTに対しては強い中和能を示し、ホルマリンで無毒化した通常の破傷風トキソイドと同等以上の免疫原性を示した。本年度の結果では二つの異なる遺伝子の直接融合によって得られた一つの遺伝子が、二つの異なる活性を持蛋白分子を産生し、それぞれの独立分子が持っていた性質を発現している事が確認された。この結果は、融合蛋白分子の構成両抗原の立体構造には大きな変化が起きていない事を示唆している。
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