研究分担者 |
KEITH Smith スワンジー大学, 化学科, 教授
井深 俊郎 京都大学, 薬学部, 助教授 (80025692)
浅尾 直樹 東北大学, 理学部, 助手 (60241519)
根本 尚夫 東北大学, 理学部, 講師 (30208293)
SMITH Keith Department of Chemistry, Swansea Univ.Professor
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研究概要 |
アリルスズとアルデヒドとの反応は有機合成において最も重要な反応の一つであり,その反応機構に関しても多くの研究が行われている。この反応は一般に加熱条件下や高圧下では還状遷移状態を経由し,ルイス酸存在下では非環状遷移状態を経て進行することが知られている。今回第三のメカニズムとでも云うべきプロトン酸触楳による環状遷移状態が存在することを見い出した。これ等の結果を踏まえて梅洋産天然物ヘミブレベトキシンBの合成についても検討を行った。 1,プロトン酸触楳による環状遷移状態の介在 Z体1a及びE体1bを別々に合成し,ルイス酸存在下,加熱下,及び酸触楳存在下に環化反応を行ったところ表一の結果を得た。ルイス酸を用いた場合には基賃のE,Zに関係なくアンチ体2aが優先して得られるのに対し,加熱条件下ではZ体からシン体,E体からはアンチ体が得られた。この結果は従来の非環状遷移状態及び環状遷移状態モデルに各々よく対応している。ところがプロトン酸存在下では生成物の立体化学が基賃の構造に大きく依存することが判った。このことはカルボニル基とスズ原子の間に強い相互作用があることを示すものである。このことから反応は3,4に示す様に5配位スズ中間体を経る環状遷移状態を経由すると考えられる。 2,ヘミブレベトキシンBの合成研究 ヘミブレベトキシンBはGymnodiumbreve から単離された魚毒成分であり,4っのエーテル環がトランスに縮合した特異な構造を有している。前述の環化反応を応用することによってこの複雑なポリエーテル環を合成することに着手した。D-マンノースより得られる7を出発原料として8を立体選択的に合成した。この合成にはエポキシドとアルコールとの分子内環化反応を利用した。8を数段階の反応操作でアリルスズ誘導体9へと変換した。この9に対してBF_3・OEt_2を作用させたところ,目的の三環性化合物が95%と高収率で得られた。さらに10,11と経て現在12の合成まで成功している。今後12の側鎖部分を結合して全合成を完成する予定である。
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