研究課題/領域番号 |
04044205
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村松 岐夫 京都大学, 法学部, 教授 (80025147)
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研究分担者 |
縣 公一郎 早稲田大学, 政治経済学部, 助教授 (00159328)
久米 郁男 神戸大学, 法学部, 助教授 (30195523)
真渕 勝 大阪市立大学, 法学部, 助教授 (70165934)
伊藤 光利 名古屋市立大学, 教養部, 助教授 (00128646)
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研究期間 (年度) |
1992
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キーワード | 戦後政治 / 労働政策 / 産業政策 / 日独比較 / 行政改革 / ヨーロッパ / 政治と行政 / 社会政策 |
研究概要 |
1993年3月25日、26日の二日間ベルリンの科学センター(WZB)にて次のような研究会が行われた。第一日は、国家制度と国際的・社会経済的環境の変化との相互作用をテーマしとて、午前にはレームブルックと村松岐夫が、戦後政治行政を独日のそれぞれについて概観した。この議論から、ドイツ側は日本をドイツと異なった国家システムと政策を採用してきた国と見る傾向があるのに対して、日本はドイツと日本の共通の経験を強調しがちであることが分かった。またドイツと日本の政治の現況に関しては類似点が多いとの共通の理解が得られた。既成政党への不信、左右の両極から新しい政治集団が生まれていることである。ただ大きな違いは、それらの両極が政党内に日本では包含されているのに対して、ドイツでは、既成政党の外から政治批判をしている点である。このことが、それぞれにおける政治改革や政策の変更に意味ある違いを与える傾向がある。 午後は、ボルマンと真渕勝が独日のそれぞれの行政改革の沿革を概観して今日の両国の立っている地点を確認した。行政改革はドイツでは、1969年の政権の交代にともなう改革が重要であるのにたいして、日本で重要なのは1980年代の第二臨調改革である。いずれにおきても大きな改革の原因は国際化と国内の経済発展に起因する価値観の変化である。戦後の国際依存関係の深まりについて理解を高める必要を感じた。程度は極点に達しつつある。 第二日は、社会経済政策の内容分析である。午前は、ドイツの社会政策をウィンドホーフが、日本の社会政策を伊藤光利が報告した。この分野では、ドイツは、ビスマルク以来の長い伝統を持つ。また。今日の問題としては、ゲスト・アルバイターの大量存在をどう見るかが重要である。これに対して日本の社会政策が組織的に行われるようになったのは比較的に最近であるとされている。しかし、日本の場合、戦前の多くの都市政策が社会政策の意味を持っていたなど研究されていない分野が多いとの結論に達した。ゲスト・アルバイターについては政策論的に参考になる情報が提供された。午後は、産業政策と労働政策をドイツ側がナショルド、日本側が県公一郎と久米郁男によって報告された。県の電気通信政策は、産業政策の事例としては狭く、産業政策をテーマとして続けるのであれば、より広い政策を取り上げる必要があるとの合意ができた。 本研究会の目的は、ドイツと日本両国の戦後を政治学の観点から相互理解を深めると同時に、10月16、17日に行われる最終研究会のペーパーの内容を調整することである。上の二日間にわたる研究会の後、二七日に我々は、今後の研究スケデュールと内容に関する調整を行った。日本で行われる第二回の研究会について次の合意ができた。開催地は京都、開催日程は、10月16・17日。このときは完成稿を持って、次の出版計画に移る。 最後に感想を付言すると、ドイツの日本への関心の底流に、日本経済への脅威があることが感じられた。自動車産業で言えば、かってホルクスワーゲンは、小型車市場で日本と競争の結果、敗退した。今ベンツもまたトヨタと日産の追い上げで苦しんでいる。ハイテク産業に関しても日本の脅威は大きい。考えてみればカメラに始まりドイツは得意分野で後退してきた。日本とは何かという関心がやはり経済問題に刺激され政治学の関心になったようである。そして、日本政治については、いわゆるリビジョニストの見解が大きな影響を与えている。日本の政治に関してすぐれた研究書が独訳されていないし、アメリカの日本政治研究も広く読まれていない。日本政治に関するドイツ語文献が増えることを望むしだいである。
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