研究課題
今年度は本研究の初年度にあたり、はじめ中国人が日常使用する生活語いを衣食住の各分野にわたってひろく収集し、視覚資料化することとし、沿岸部から上海、内陸部から西安、北方から北京、南方から広東の4都市をえらんで家庭訪問や聞き書きの方式で現地調査をすすめる計画をたてた。しかし、調査対象の大きさに比して時間的な制約があり、実地調査では、(1)伝統的家屋とその住まい方に関する生活語い、(2)家庭内に見る生活用品とそれに関連する生活語い、(3)屋外、とくに街頭における生活関連語い、(4)日常生活の変化にともない、市場等に見られる商品と関連語い、などに重点をしぼり、とくに聞き書きと写真撮影によって資料を収集した。その結果、収集した資料から、中国人の日常生活における急速な近代化と、それにともなう生活関連語いの変化が明らかになった。とくに香港・台湾の語いが相当に流入し、さらに日本語からの借用なども増えていることが判明した。日本語に由来する造語も少なくない。例えば商店の屋号を示す「〜屋」はその一例である。外来の食品も多く、それらをうつす外来語が目立っている。現地調査では、生活様式の変化による住宅の改造、個人営業や出前の開始など市場の変化、郵便電話等の通信手段の進歩などに関し、語い資料と視覚資料が多数収集できた。収集資料の日中比較対照作業については、今後中国からの研究者招へいを強化する要もある。予定していた視覚資料作成のうち、日常生活関連の動作動詞を記録する作業は現地で順調にすすめられ、図説集を編集中である。研究代表者等が以前から編集していた「中国語図解辞典」が92年末に刊行されたが、その仕上げの段階では、今年度の収集資料を借り、郵便電信関係をはじめ、寄与するところ大であった。
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