研究概要 |
中国新彊ウイグル自治区における調査成果は以下のとおりである。チムサルでは北庭都護府故城・チムサル故城・高昌ウイグル寺院跡を踏査・見学し,既報告による平面プランの検討などを行うことができた。フブクサールでジュンガル王国初期の都城を実見・調査し,瓦などの遺物の散布状況を確認した。アルタイ地区一帯において岩面の未報告資料を実見・調査することができた。その結果,種々のモチーフを確認し,表現方法・構成などから数類型の様式にまとめることができることがわかった。象と理解されてきた岩面をただちにそのように理解すベきではないことを確認できたことも収穫である。なお,岩面の年代幅は非常に長期に及ぶとみられるが,石人墓の石囲中に岩面を見いだすことができ,これまで不明な点が多かった岩面の年代の一点を推定できる可能性を得たことは大きな成果である。土〓墓については,これまで詳細な報告がほとんどなく基礎的データが不足していたが,ボロ市近郊において土〓墓群の略測図を作成できたことは重要な成果である。その結果,大小の墳丘からなる土〓墓群の構成や個々の墳丘の形態と規模を知ることができた。墳丘規模の差とその築造順位の関係など,被葬者とその社会を研究するうえで今後検討されるベき課題が得られたといえる。今回の調査は略測ではあったが,こんごの土〓墓研究において重要な基礎資料となるはずである。以上,ジュンガル盆地一帯において,日本の研究者がほとんど訪れたことがなかった遺跡を実際に踏査し,現状をつぶさに観察できた。これまで不明確であった点について多くの知見を得ることができ,今後の本研究全体の遂行にあたって有意義な成果を得た。 なお,帰国後,調査資料の整理を継続して行に,成果の一部は九州大学で開催された海外調査報告会において一般公開のもと,「中国・新彊ウイグル自治区の調査」と題して発表を行った。
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