研究分担者 |
李 毓義 長春獣医大学, 教授
王 水琴 長春獣医大学, 助教授
劉 宝岩 長春獣医大学, 助教授
李 養賢 長春獣医大学, 助教授
韋 旭斌 長春獣医大学, 講師
小山田 敏文 北里大学, 獣医畜産学部, 講師 (20160947)
小笠原 俊実 北里大学, 獣医畜産学部, 講師 (90050674)
吉川 博康 北里大学, 獣医畜産学部, 助教授 (70101516)
小山 弘之 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (00072372)
椿 志郎 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (70050507)
|
研究概要 |
平成4年7月1日から7月14日までの2週間,鹿の地方病性運動失調症の病理学的研究を中国・長春獣医大学と共同で行った。本年度は本病が多発している吉林省・遼源市の鹿牧場の疫学および血液学的検討,ならびに病理解剖による病態検査を重点項目とした。また同時に,未発生牧場である遼寧・の西豊鹿牧場を比較調査した。 1.発生調査:発生牧場である遼源牧場は1953年に開設され,現在は1200〜1500頭の梅花鹿が飼育されている。運動失調を特徴とする鹿病は1985年より発生し,現在に至っている。平均10%の発生率であるが,特に初秋に多発する傾向がある(14%)。その発生は離発的で,親子,年齢および雌雄関係は指摘されない。 2.臨床所見:特徴は後肢の虚弱・動揺・活力低下を示す腰萎症状(Incoordination; Ataxia)である。重症の場合は起立不能に陥るが,経過は進行性で且つ緩慢である。慢性経過した個体は栄養状態が悪く,被毛は粗剛・失沢し,しばしば脱毛を来たしている。 3.血液学的所見:遼源鹿牧場の罹患例60頭,健康例46頭の血液検査を行った。赤血球数(_X10^4):罹患鹿842±25.0,健康鹿1093±14.2,血清銅:罹患鹿--♂5.88±0.19,♀5.56±0.22,健康鹿--♂16.49±0.67,♀7.55±0.19 U/L,血清鉄:罹患鹿--♂31.64±0.90,♀27.12±1.15,健康鹿♂26.29±1.26,♀23.99±0.99 U/L 4.病理解剖所見:病理解剖例7頭について,組織学的に検討した。共通かつ特徴的病変は,1)脊髄白質における脱髄,2)脊髄軟膜の細胞性肥厚,3)脊髄軟膜下細胞脈壁の肥厚,4)血鉄症,5)全身リンパ節におけるアミロイド沈着,6)増殖性糸球体腎炎 本年度における病理学的検索により,運動失調症は脊髄白質変性に起因することが明らかになった。また,血清銅の低下と血清鉄の増加が指摘され,本症の発生に代謝異常が推察されたが,組織学的に認められた全身性の免疫異常を示唆する病態との関連性について検討する必要が残された。
|