研究概要 |
ポーランドに代表される東欧諸国の民主化の第二段階は,民主化推進主体(ポーランドの連帯や他の国々での市民フォーラム)の分裂と旧共産党系勢力の一定の復活といったものである。このような傾向は,昨年度のポーランドの総選挙だけでなく,一昨年の秋のチェコスロバキアの地方選挙も同様の結果で,旧共産党勢力が第二党の座を占めている。そもそも連帯や市民フォーラムは,共産党の支配に反対する広範な市民や諸階層の連合体であった。したがって,共通の敵であった共産党が崩壊すれば,当然のことながら連帯や市民フォーラムも分裂を余儀なくされるという皮肉な結果となった。他方で,市場経済の導入のプロセスでは,その変化に適応できない社会的諸階層(特に,年金生活者や無資格労働者)そして失業者が広範に発生し,このような諸階層を新しい支持母体として旧共産党系勢力がある程度,台頭してきたのである。 昨年の5月,ポーランド国会(下院)は,デコミュニゼーション(非共産主義化)の一環として,秘密警察への協力者の調査を決定した。これは,その後,権力闘争に利用されたり対立する諸党派間の取り引きの材料となってしまい,チェコスロバキアのような名籍の公表という形にはならなかった。連帯右派や民族主義的政党の旧共産党批判には,経済改革の現状に不満をもつ国民の批判をそらすという面もあり,この種の法律(戦後,西ドイツで見られた反ナチ法)がポーランドで成立するか否かはきわめて流動的である。
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