鍼灸効果の科学的立証に関する日中大学間協力研究

1994 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 04045052
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 大学協力
• 研究機関: 関西鍼灸短期大学
• 研究代表者: 木村 通郎 関西鍼灸短期大学, 教授 (50111745)
• 研究分担者: 劉 平 中国, 上海中医薬大学, 教授 ; 張 洪度 中国, 上海中医薬大学, 教授 ; 趙 偉康 中国, 上海中医薬大学, 教授 ; 東家 一雄 関西鍼灸短期大学, 講師 (90183491) ; 野口 栄太郎 関西鍼灸短期大学, 助教授 (80218297) ; 戸田 静男 関西鍼灸短期大学, 教授 (00150152) ; ZHAO Wei-kang Shanghai University of Traditional Chinese Medicine, Professor ; LIU Ping Shanghai University of Traditional Chinese Medicine, Professor ; ZHANG Hong-du Shanghai University of Traditional Chinese Medicine, Professor
• 研究期間 (年度): 1992 – 1994
• キーワード: 鍼灸医学 / 抗老化 / 抗酸化 / 東洋医学 / 中医薬 / 鍼治療

研究概要

本研究は我国と中国鍼灸高等教育機関(関西鍼灸短期大学・上海中医薬大学)の鍼灸教育研究者が互いに協力し「鍼灸効果の科学的立証に関する」共同研究を進め両国の鍼灸研究に関する実験の方法論や概念の違いを明かにし、その成果を我国鍼灸学研究に反映させ、鍼灸医学の国際化に資する事を目標に平成4〜6年の3カ年プロジェクト実施されてきたものである。共同研究に取り組む上海中医薬大学は北京中医薬大学と並んで大学院博士課程を持つ中国鍼灸の中枢に位置し、WHO国際鍼灸研究センターとして広く海外からの留学生を受け入れ世界の鍼灸研究でも中心的役割を担っている。本学とは1985年に姉妹校締結を行い以来、本研究組織の中国側研究分担者の趙教授と交流を持ってきた。
中国古来の伝承医療である鍼灸は近年、世界的規模で身近な医療として普及し、欧米社会にも愛好者が増加している。しかしながら、それら鍼灸作用機序に関する科学的根拠となると西洋医学のそれらに比べ、不明瞭な点が多く、実験データーに乏しい点否めない。この様な点に鑑みWHOでは「鍼灸の科学化」、即ち西洋医学的評価に取り組んでいる。本研究課題でも両大学の第一線の研究者が年2回それぞれの大学を訪れ、各1回ずつ班会議を持ち、豊富な臨床例数を有うする上海中医薬大学研究分担者と本学の西洋医学的教育を受けた研究者が一同に会し研究の方法論や概念の違いについて話し会いながら、両大学それぞれの立場で実験的研究に取り組み、3カ年、計6回の班会議にて互いに研究成果の評価を行う事ができた事は、これからの鍼灸教育研究に有益な成果を納める事ができた。
これら一連の班会議にて痛感した事は、現在、中国鍼灸医学は中西結合(中国伝統医療と西洋医学のドッキング)を旗印に推進されているけれども、中国の西洋医学研究のレベルは、我国や欧米諸国のそれらに比べ、研究者の質、研究質材とも乏しい事等から極めて低い。従って、中国で鍼灸効果の科学的立証を具現化するには我国や欧米諸国の進んだ研究方法論に基ずく協力研究が極めて大切である。また、反対に鍼灸医学を西洋医学の研究者が理解するには中国古来の東洋思想や、その豊富な臨床例数を無視しては行い得ない事が解った。
第1回班会議(上海中医薬大学、1992年10月31日〜11月4日)は本学研究代表者(木村)、研究分担者(三国、戸田)、研究協力者(黒岩)が訪中し、それぞれ「鍼灸効果に関する実験医学的研究-木村;東洋医学療法に関する内科学的評価;生薬に関する東洋医学的評価-戸田;硬結に関する実験医学的解析-黒岩」を口演発表し、上海中医薬大学側研究分担者は「鍼灸治療の抗老化作用-趙;糖尿病性白内障の鍼灸治療効果-張」を発表、それら研究の方法論や解釈の概念の相違などを協議した。
第2回班会議(関西鍼灸短期大学、1993年2月27日〜3月3日)は同組織メンバーで実施し、中国側研究分担者が「経穴・経絡に関する中医薬的解析-趙;精神病患者に対する鍼灸治療効果-張」口演発表し、研究組織で討議した。同班会議では本学附属鍼灸治療所で鍼治療手技の類似点や違いについても実際の場で検討する事ができた。
第3回班会議(上海中医薬大学、1993年10月9日〜10月22日)では本学鍼灸学担当教授を研究分担者に加え「サーモグラフィーによる鍼灸効果の評価-藤川;鍼灸効果の神経生理学的検索、特に筋電図に現れるユラギ現象について-上田;生薬ヨモギの抗酸化作用-戸田」などの同年度の日本東洋医学会や全日本鍼灸学会に報告した演題を口演発表し、上海中医薬大学側は「中薬・環精煎に関する研究」を報告互いに意見交換した。
第4回班会議(関西鍼灸短期大学、1994年3月20日〜3月24日)は上海中医薬大学側研究分担者が来学「中薬・調心方の抗老化作用-趙;白内障ラットに対する鍼灸治療効果-張」発表し、本学研究組織構成者は「筋不動化時にみる脊髄神経細胞でのc-fos核内癌遺伝子発現-木村」を発表し、学外講師などを交え研究討議会を持ち意見交換を行った。
第5回班会議(上海中医薬大学、1994年11月8日〜11月11日)では本年度研究組織構成者が一同に会し、これまでの鍼灸作用機序解明を対象とした実験医学的研究を発表相互意見交換を行った。
第6回班会議(関西鍼灸短期大学、1995年3月5日〜3月8日)は最終班会議として上海中医薬大学側研究分担者の趙・張・劉の3教授を迎え本学研究組織構成メンバーとこれまでの共同研究の成果をまとめ、互いの今後の共同研究の基本方針について検討し、一部は英文論文形式でまとめた。

研究成果

• [文献書誌] Zhao Wei-kang, Zhang Hong-du, Xu Feng-xian, Jin Go-qin, Liu Ping, Michio kimura and Shizuo Toda: "Effect of moxibustion Guanyuan (CV4) on the hypothalamus pituitary-thyroid axis and Interleukin-2 of senile rats." Amer.J.Chinese Medicine. (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Michio Kimura, Kazuo Tohya, Motoyo Ohnisi, Shizuo Toda and Yosiro Yase: "Suppresive effects of moxibustion stimulation on the DTH-induced animals." Proc.of the 4th international congress on traditional Asian Med.76-77 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kazuo Tohya and Michio Kimura: "Immunohistochemical charactrization of B cells and T cells in musk shrew (Suncus murinus) lymphoid tissues using monoclonal antibodies." Histochemistry. 102. 445-450 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Hirotugu Kojima et al.: "An ultrastructural study on anterio cruciate ligament reconstruction using autogeneous patellar tendon grafts in dogs." Med.Electron Microscopy. 27. 149-158 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Shizuo Toda, Motoyo Ohnishi, Michio kimura and Tomoko Toda: "Inhibitory effects of eugenol and related compoud on lipid peroxidation induced by reactive oxygen." Planta Med.60. 282-283 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Hideki Tei et al.: "Characterization of cultured mast cells derived from Ws/Ws mast cell-deficient rats with a small deletion at Tyrosine kinase domain of c-kit." BLOOD. 83. 916-925 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より