研究課題/領域番号 |
04101001
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研究機関 | 奈良国立文化財研究所 |
研究代表者 |
佐原 眞 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (20000466)
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研究分担者 |
松井 章 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究官 (20157225)
石黒 直隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (00109521)
中野 益男 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (30111199)
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キーワード | 古代生活環境復原 / 残存脂肪酸 / 残存コレステロール / 残存コプロスタノール / 残存脂質分析法 / 古代トイル / 墓拡 |
研究概要 |
これまで我々は主に考古資料に残存する脂質の脂肪酸およびステロールの化学組成を基準資料と照合して、遺物の動植物種を選定する残存脂質分析法を開発してきた。その結果、この分析法は、いままで絶望的とみられていた古代の生活環境復原を画期的に前進させるまでになった。しかし、数種の動植物を混用した場合には、脂肪酸とステロールを調べるだけでは、種を識別するのは因難である。そこで、この残存脂質の持つ問題点を解決し、動植物種に固有に保存する免疫質あるいは遺伝子配列なども合わせて研究対象とした。 本年度では、本格的な研究実施のために必要な基礎資料の集積と新たに導入した高感度の質量分析計による考古資料の分析を試みた。 1.現生動植物資料の脂肪酸およびステロール組成のデータベース作成 原始古代の生活に係わる動植物の現生資料の脂肪酸やステロールの化学組成に関する標準パターンを集積してベース化する。 2.古代トイレの確定 福岡市鴻臚館は8世紀半ばの迎賓館である。そこから出土した三つの深い穴から糞便の脂肪酸と哺乳動物特有のコプロスタノールが高感度質量分析計により検出された。穴はトイレと確定された。コプロスタノール/コレステロールの比率は動物の種類や性別によって異なる。男性で4.23,女性で2.15である。穴からはその比率に近い値を得た。トイレには男女の使いわけがあったと推定される。 3.墓拡の認定と男女の識別 鹿児島県鹿屋市西丸尾遺跡は縄文時代草創期(約1万1千年前)の配石遺構である。組石の下には、高等物動の頭部に含まれる高級脂肪酸の他に、腹部にあるコプロスタノールとコレステロールが検出された。その比は、男性4.25に近く男性の墓と判定できた。
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