研究概要 |
本年度の脂質・免疫質にかんする研究成果の主要なものをかかげ、今年度新たに導入したDNAシーケンサによる研究の内容について報告する。 1.古代トイレの確定と男女の識別 福岡市の鴻臚館遺跡(8世紀半ばの迎賓館)でみいだした2種類のトイレをコプロスタノールの残存率から昨年度に男用・女用と推定した。今年度は、後者からエストロジェンなど女性ホルモン5種を検出し、さきの推定を検証できた。 2.八瀬遺跡のムラのトイレの確定 群馬県八瀬遺跡(縄紋後期)の水場〓遺構の下流水路からコプロスタノールを検出した。縄紋トイレの一部を始めてつかんだことになる。 3.環状列石遺構群の墓墳の認定 岩手県湯舟沢II遺跡・秋田県大湯環状列石群(縄紋後期)からはヒト血液型物質を検出した。これによって、遺構群が墓であることは確定的になった。 4.胞衣(胎盤)の認定 秋田市秋田城遺跡(9世紀)の住居跡から出土した璧から胎盤に特有の成分が免疫学的に検出できた。血液型にA型と判定された。精確な動物種、臓器の判定には免疫学的分析が有効であることを明らかにできた。 5.灯明皿の油種の判定 福井県一乗谷朝倉氏(15・16世紀)の邸宅・家臣の家・町民の家から出土した灯明皿に残存する油種はエゴマ油とシカ・イノシシの獣油であった。階層による油の使いわけがあるようだ。 6.現生動物ミトコンドリアDNAの塩基配列データの作成。イノシシ,ブタ,ウシ,ヒツジ,シカ,カモシカ,ツキノワグマ等のDNA塩基配列をDNAシーケンサを用いて分析し、データベース化を進行している。
|