研究概要 |
本年度は核共鳴散乱実験の準備としてまづ機器の開発研究を行なった。X線・γ線回析散乱装置,内部転換電子解析装置,X線光学系,高速X線検出系,ドップラー振動系,パルス磁場発生器,高温炉などの実験機器の設計・製作あるいは整備を進めた。それらと併行して核共鳴散乱体の作成と評価を行なった。結晶としては ^<57>Fe同位体を用いてFe_3O_3とFeBO_3をフラックス法により育成したところ,数mm^2ぐらいの領域では完全に近い結晶とみなすことができた。コーティングミラーについてはNc/ ^<181>Ta/Si基板と ^<169>Tm/Ta/Si 基板をスパッタリング法で作成した。 放射光利用の核共鳴散乱研究を高エネルギー物理学研究所トリスタン畜積リングのX線アンジュレーターにより行ない,つぎの成果を得た。 1. ^<57>Fe_2O_3結晶と ^<57>FeBO_2結晶を用いた核共鳴ブラッグ散乱の実験 ^<57>Fe_2O_3の核共鳴ブラッグ散乱の時間スペクトルを測定し,そのディケイ・プロファイルに核の超微細相互作用に起因する量子ビートを観測した。またパルス磁場印加の ^<57>FeBO_3の散乱で偏光ミキシングを調べた。 2.核共鳴前方散乱の実験 X線光学系でX線,エネルギー幅をごく小さく絞ったのち, ^<57>Feメタル箔に入射し,核光鳴前方散乱の時間スペクトルを観測した。ディケイ。プロファイルには量子ビートとともに箔の厚みの効果が現われた。また ^<57>Fe-ステンレス鋼箔を2枚並べ,一方を振動させて共鳴エネルギーを10^<-7>eVのオーダーでシフトさせ,量子ビートの変化を観測した。 3.X線干渉計による核共鳴前方散乱の実験 LLL型X線干渉計の2つの光路に ^<57>Feメタル箔を挿入し,2枚の箔からの核共鳴散乱どうしの干渉を観測した。つぎに ^<57>Fe-ステンレス鋼箔に置き換え,一方を等速度で振動させて,干渉したビームの時間スペクトルに現われる量子ビートの変化を観測した。
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