放射光による核共鳴X線光学

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04102001
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 菊田 惺志 東京大学, 工学部, 教授 (00010934)
• 研究分担者: 依田 芳卓 東京大学, 工学部, 助手 (90240366) ; 泉 弘一 東京大学, 工学部, 助手 (10184574) ; 石川 哲也 東京大学, 工学部, 助教授 (80159699)
• キーワード: 核共鳴散乱 / 放射光 / 時間スペクトル / ディケイ・プロファイル / 量子ビ-ト / ヘマタイト結晶

研究概要

超強力な放射光による核共鳴散乱現象に対し新しい手法に基づく独自の基礎的・応用的研究を進めている。それを実現するための機器開発も併せて行なっている。そのおもな成果はつぎのとおりである。
1.測定機器・核モノクロメ-タ-などの開発研究
(1)核共鳴散乱線のS/N比を向上させるために用いる狭エネルギ-幅の分離型4結晶X線分光器を設計・製作し、特性試験を行なった。(2)核モノクロメ-タ-として完全性の高い^<57>Fe_2O_3結晶と^<57>FeBO_3結晶をフラックス法で育成した。^<181>Taを含むGIAR膜,^<119>Snを含む多層膜の核モノクロメ-タ-の最適設計をした。(3)ドップラ-効果利用のエネルギ-可変核分光器を開発した。(4)水平軸型X線/γ線回折散乱装置を設計・製作した。(5)100psの高時間分解能をもつアバランシェ・フォトダイオ-ドX線検出器を作製した。(6)内部転換電子の高時間分解計測装置の開発を進めている。(7)^<57>FeBO_3結晶にパルス磁場をかけることにより核共鳴散乱強度を10nsの高速でスイッチングする機構を製作した。
2.核共鳴散乱の研究
(1)^<57>Fe_2O_3結晶からの1000nsに及ぶ核共鳴ブラッグ散乱の時間スペクトルに量子ビ-トを観測し、そのフ-リエ変換により核準位の超微細構造パラメ-タ-を求めた。(2)^<57>FeBO_3結晶からの核共鳴ブラッグ散乱の過程において外部磁場の高速スイッチングによって散乱線の偏光特性の時間的発展を調べた。(3)^<169>TmのGIAR膜からの反射線を^<169>Tm_2O_3パウダ-を透過させ、核共鳴散乱を観測した。(4)X線干渉計内の2光路に^<57>Fe-ステンレススチ-ル鋼箔を入れ、核共鳴前方散乱の時間スペクトルで箔の厚さの効果を散乱振幅の符号まで含めて観測した。(5)^<119>Sn箔にエネルギ-を変えながらX線を入射し、フォノン励起を伴った核共鳴非弾性散乱を観測した。

研究成果

• [文献書誌] S.Yamamoto: "In-vacuum undulator installed in a 6.5GeV storage ring for producing brilliant 14.4KeV Mossbauer photons" J.Appl.Phys.74. 500-503 (1993)
• [文献書誌] T.Ishikawa: "Applications of dynamic X-ray diffraction to advanced synchrotron X-ray optics" SPIE Proceedings. 1740. 72-80 (1993)
• [文献書誌] K.Hirano: "Perfect crystal X-ray phase retarders" Nucl.Instrum.& Methods. A336. 343-353 (1993)
• [文献書誌] C.K.Suzuki: "Flux Growth and Characterization of α-^<57>Fe_2O_3 Single Crystals for Nuclear Bragg Scattering Optical Components" Jpn.J.Appl.Phys.32. 3900-3904 (1993)
• [文献書誌] Y.Hasegawa: "Mixture of two interfering beams in an X-ray interferometry" Z.Phys.B93. 133-139 (1994)
• [文献書誌] 菊田惺志: "核共鳴ブラッグ散乱による放射光の超単色化" 応用物理. 62. 683-690 (1993)
• [文献書誌] S.Kikuta(分担執筆): "Proceedings of the ICAS Conference,August 17-21,1992,Malente/Hamburg,Germany" Elsevier Science Publishers B.V.(出版予定), (1994)