研究概要 |
紫外・可視・近赤外領域単一モード波長自動選択・波長自動補正可能なレーザー計測システム,光・磁場(または電場)・分子線併用装置およびドップラーフリー偏光分光法,ドップラーフリー光・光二重共鳴偏光分光法,ドップラーフリー二光子吸収分光法の装置を開発・製作した。これらを用いて、 1.超高分解能分光法による研究を行ない、種々の励起分子の構造と動的挙動の解明をおこなった。特に、光励起による前期解離で量子効果としての干渉効果を発見した研究は、化学反応に関与する準位間における波動関数の位相の重要性を実証した先駆的で重要な成果である。 2.多原子分子への展開として、グリオキザ-ルのドップラーフリー二光子吸収スペクトルを測定し、遷移の同定・分光定数の決定をおこなった。従来の高分子解能スペクトルより100倍以上の分解能を得て、従来の分光法では観察できなかった微小な摂動や磁場の影響を観測しその機構を解明した。二硫化炭素およびピラジンについて、サブドップラーの分解能で、ゼーマン分裂,シュタルク分裂,磁場(または電場)により誘起された遷移・摂動を観測した。これは準位間相互作用,磁場の影響等に関するエネルギーシフトとスペクトル強度を活用した先駆的研究である。 3.外部磁場下で、Cs_2分子の間接前期解離の生ずる単一の電子・振動・回転準位に選択的に光励起し、解離生成した原子の光吸収遷移のドップラー線形スペクトルを測定した。これは解離確率の方位磁気量子数依存性と各方位磁気量子数ごとの並進方向依存性を明らかにした最初の研究である。 4.高速過程の研究に用いるのでレーザー光は線幅が大きく、同時に多くの準位を励起する。高分解能分光法では単一の準位について、スペクトル線の線幅より寿命に関する情報が得られる。NaI分子のA-X遷移について、個々の回転準位について線幅を測定し、高速過程分光法で得られた成果を併用して前期解離の機構を解明した。
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