本年度は、in vitro において、胚性幹細胞からストローマ細胞との共生培養によってリンパ血球系細胞への分化誘導系を確率した。B細胞はストローマ細胞との共生細胞によって中胚葉系の細胞を経て、やがて血球系のすべての系列への分化をすることが可能となった。この系ではM-CSF遺伝子欠失ストローマ細胞を用いることによってリンパ球系への分化誘導をも可能にしたことが大きな特色である。この細胞系に様々な抗体を加えるか、あるいは遺伝子欠失ES細胞を用いて血球分化系の機能解析を精力的に展開している。またシグナル-クエンストラップ法を用いてさらに多数の遺伝子の単離を行ない、現在その機構を解明するために蛋白質を発現させ、in vitroの血球系細胞分化系への投与実験を行いつつある。クラススイッチの分子機構の解析に関して非常に高頻度にクラススイッチを起こすCH12F3株を単離し、この系にIL-4、TGFβ及びCD40Lを加えることによって常に50%以上の細胞がIgAにクラススイッチを起こすことを示した。リンパ球の選択機構の研究に関して、本年度は細胞死に関わる遺伝子をsubtraction hybridizationにより精力的に単離しMA3と名付けた未知の遺伝子を単離した。この遺伝子はこれまで単離した遺伝子と全く相同性がなく未知のものであるが、現在その機構については明らかではない。RBP-Jκ遺伝子の解析を続け、この遺伝子がショウジョウバエにおける抹消感覚神経系の細胞の運命決定に関わる一方、EBウイルスBリンパ球腫瘍化に際して不可欠なEBNA2蛋白質と協調して多数の遺伝子の転写制御を行なうことを明らかにした。
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