研究課題
本年度は、マウスやラットのさまざまな方法で誘導した肝癌のp53変化やLOHを精力的に解析したが、原発巣には変化がほとんど見出されないことが明らかになった。他方、ヒト肝癌でも、臨床癌にはp53変異やLOHが高頻度で見出されるにもかかわらず、早期癌には全く見い出されないことが示された。すなわち、実験肝癌の原発巣は、ヒトの早期肝癌に該当することも考えられ、これらを研究することが、ヒト癌の早期変化を解析することになる。また、HBVの組み込みをマーカーにして肝硬変の“再生"結節を多数解析したところ、その1/3に10^5ヶ以上の肝細胞のクローナルな増生があることが示された。これらの増生巣は、組織学的にはneoploskilesionとして把握されないが、前癌性病変として注目される。また、カドヘリンをよく発現しているにもかかわらず細胞接着性の低い肺癌細胞を調べ、細胞膜の裏打ちタンパクであるα-カテニン異常により、カドヘリンが細胞接着因子として機能しないことを明らかにした。また、肝発癌の前癌病変の最も鋭敏なマーカーであるGST-Pの活性化のメカニズムが更に調べられ、Jun/Fos以外の活性化因子も存在することが示された。
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