1.Xist遺伝子のクローニング 15kbとされるcDNAの約8割をクローン化し、シーケンスも終了した。現在、5'領域のゲノミッククローンの分離に力を注いでいる。 2.Xist遺伝子がX染色体不活性化センター(Xic)に相当するか否かを検討するために、ECCx雌体細胞の系で不活性Xが活性化する過程でのXisT遺伝子の発現変化をRT-PCR法で調べている。再活性化には細胞融合後4-5日を要するがXistの発現もこれにほぼ並行して消失した。現在、in situ hybridization によって更に細かい点の解析を行っている。 3.Xistとは別にXicを分離するための実験材料として生殖細胞キメラ形成能の高いES細胞株の樹立を試みている。既に染色体転座を持つものも含め50余株の樹立に成功した。雄2株についてはキメラ形成能を調査し、いずれも生殖細胞に組み込まれることが明らかになった。 4.マウス雌胚発生では父由来のX染色体がまず胚体外部で不活性化し、次いで胚体部ではランダムな不活性化が起きる。この選択的な不活性化現象にはXicにあるimprintingが関与し、1-2日後imprintingが消えるためにランダムになると考えられていた。我々の樹立した雌型ES細胞6株を用いて培養下で胚様体を形成させX染色体の不活性化を起させる系で検討したところ30回の継代培養後にも胚体外部に当たる部分では父由来Xが不活性となりこのimprintingは従来想定されていた程には不安定なものではないこと、そしてこのimprintingに対する反応が組織によって違うらしことが明らとなった。
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