転移・浸潤の各ステップを解析するためにVLA-4α鎖遺伝子をヒト線維芽内腫細胞HT1080に導入した。VLA-4抗原を高発現するHT-VC1株では、親株のHT1080に比しin vitroおよびin vivoで血管内皮との結合能が著明に増強し、typeIVコラゲナーゼmRNAの増加およびinvasive assayにて浸潤性の増強が認められた。しかしながらVLA-6(ラミニンレセプター)の低下により内皮基底膜への接着能が低下しており、ヌードマウスに静注しても親株に比し転移巣の数に変化は認められなかった。HT-VC1株をラミニン上で培養しVLA-4とVLA-6の発現が増強したHT-VCL株では、血管内皮との 接着および基底膜との接着が増強しており、転移巣の増強を認めた。転移・浸潤の各ステップで異なる接着分子が機能していることが明らかとなった。またR2-1A6抗原を発現するラット高円柱上皮、好中球、マクロファージよりcDNAライブラリィーを作製した。これを発現ベクターCDM8およびSRαに組み込んだ。COS細胞に遺伝子を導入し、R2-1A6抗原の発現を指標としてR2-1A6抗原の遺伝子のexpression cloningを行い、数個のクローンを得た。順次その塩基配列の決定を行っている。1つのクローンの全塩基配列を決定したが、expression cloningの過程で使用する2次抗体との反応のためと思われるが、低親和性のFcr受容体であるFcrRIIBがクローニングされた。この受容体はラットで初めてクローニングされたものであり、好中球及びマクロファージに発現している。現在残りのクローンの塩基配列を検討中である。
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