蛋白質チロシンホスファターゼ(PTPase)1は、2ケのsrc相同領域2(SH2)と1ケの触媒ドメインを有する。SH2はsrcファミリー等の信号伝達蛋白質に見られる、リン酸化チロシン残基結合部位である。従ってPTPase1は蝕媒ドメインとSH2との2種のリン酸化チロシン残基認識部位を有する独特なPTPaseである。 インビトロでリン酸化したバンド3、微小管結合蛋白質2、チコブリンに対する脱リン酸特異性をPTPase1を含む4種のPTPaseの間で比べた所、PTPase1はチコブリンをバンド3よりも1.5倍速く脱リン酸するのに対し、他の3種のPTPaseは全て逆にバンド3をチュブリンを3-10倍速く脱リン酸した。PTPase1の基質の認識にそのSH2が寄与している可能性が強い。 バンド3へのPTPase1の結合性を調べた所、予想に反して、PTPase1は非リン酸化型、リン酸化型のどちらのバンド3にも結合した。非リン酸化型では、PTPase1はバンド3のプロテアーゼ抵抗性部分に結合したが、リン酸化型の場合は、バンド3のプロテアーゼ感受性部分にPTPase1は結合した。従ってバンド3の2つの部分へのPTPase1の結合性はバンド3のチロシン残基リン酸化により調節される事になる。これは既知のSH2含有蛋白質の中で記載のない蛋白質間相互作用とその調節である。PTPase1が肝細胞で作ちする蛋白質を探る目的で、まず2種の細胞質型蛋白質チロシンキナーゼに対するPTPase1の脱リン酸活性を調べたが、その活性は非常に低かった。今後、受容体型蛋白質チロシンキナーゼ、その他の、インビボ或いはインビトロ、チロシン残基リン酸化蛋白質に対するPTPase1の脱リン酸特異性、結合特異性を調べる必要がある。
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