次に述ベる三つの成果を得ることができた。 1.腫瘍内浸潤T細胞の受容体遺伝子定量法の確立: cDNAを環状にし、T細胞受容体定常部プライマーを用いて二段階PCR法を行うことによって。浸潤T細胞受容体遺伝子を均一に増幅することを可能にした。この方法の利点は(1)ほぼ100個のT細胞の浸潤があればこの方法で検出可能である。(2)これらのクローンから遺伝子配列を決定することが可能である。(3)受容体の使用頻度の測定が可能であるある。であり、腫瘍内浸潤T細胞レパトアの研究に貢献するものと思われた。 2.メラノーマ・レパトアの解析: 上述の方法で、メラノーマ浸潤レパトアの解析によってレパトアは著しく限定されていることが判明した。TCRα鎖は5種類しか検出できず、しかもVα3とVα42H11が全体の1/3と1/4を占めた。それらはいずれもJ塩基配列が異なることからスーパ抗原様の抗原の関与が考えられた。 3.T細胞受容体分子の可溶性キメラ蛋白化: T細胞受容体と免疫グロブリン遺伝子をキメラ化し、これまで膜分子としてしか抽出できなかったT細胞受容体を可溶化分子として大量生産させることに成功した。遺伝子再構成を起こしているゲノムDNA遺伝子断片を分泌型免疫グロブリン定常部遺伝子と結合させ、L鎖のみを産生するJ558L骨髄腫にキメラ遺伝子を導入すると可溶性キメラ分子を産生した。
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