MHCクラスI様分子と反応する抗体(RE2)による細胞死は補体非依存性に、apoptosisや壊死とは異なる形態の細胞死を引き起こすこと、リンパ球以外の細胞を瘍害しないこと、リンパ球系の細胞でも、正常細胞を瘍害しないこと、造血系細胞や成熟リンパ球の供給源となる胸腺細胞を瘍害しないで、持続的に増殖しているT細胞クローンやマイトゲンによって増殖を誘導したリンパ球のみが瘍害されることが明らかになった。 今年度は、RE2抗体による細胞死の機序に重点をおいて基礎的な解析を行なった。その結果、(1)RE2抗体が細胞表面分子に結合するだけでは細胞死は誘導されず、表面分子を架橋することによって細胞死が誘導されること、(2)細胞死はサイトカラシンによって完全に阻止されること、(3)MHCクラスI分子欠損細胞株では細胞死が誘導されないこと、が明らかになった。 これらの解析と並行して、RE2分子の遺伝子クローニングの準備を行なった。細胞死が活性化リンパ球でのみ認められることから、活性化リンパ球のcDNAライブラリーの作製を行なった。また、活性化リンパ球からのRE2抗体沈降物を用いてRE2抗体と同様に細胞死を誘導する抗体(S27)を新しく作製した。このS27抗体は、インムノブロッティングに使用できなかったRE2とは違って、ブロッティングに使用できるので、今後予定しているcDNAライブラリーのクローニングにきわめて有効な抗体になると思われる。
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