1.ホルモン応答性増殖刺激因子遺伝子と受容体との関係 NADPH依存性細胞質甲状腺ホルモン結分蛋白(CTBP)はホルモン応答性細胞増殖刺激因子の一つと考えられている。このCTBPは甲状腺ホルモンで誘導され、しかもこの誘導は甲状腺ホルモンによるCTBPの転写促進として実験的に証明された。そのためこのCTBP遺伝子には甲状腺ホルモン応答部位(TRE)が存在する可能性がある。本研究ではCTBP蛋白によりアミノ酸配列、およびこれに基づくヌクレオチド配列解明を行った。しかし、一部の構造解明はできたもののFull lengthの構造解析は不可能であった。従って受容体とこのCTBPとの直接的関係の存在を証明することは出来なかった。しかし、甲状腺ホルモンによるCTBPの増加は甲状腺ホルモン作用に対し抑制的に作用することが明かとなったため、この関係の解明は技術的には可能である。 2.ヘテロ2量体によるホルモン応答性細胞増殖刺激因子遺伝子の発現甲状腺ホルモン受容体がホモ2量体を形成して作用を発現することはよく知られている。最近、他のリガンド、たとえばRA、ビタミンD3、によるテヘロ2量体は甲状腺ホルモンの作用に対し少なからぬ影響を及ぼすことが知られるようになった。われわれの研究でもこの事実を確認した。さらにホルモン応答性細胞増殖刺激因子遺伝子の発現にもこれらの機構が関与すると思われる実験結果を得ている。しかし、末だ、この刺激因子の構造が充分に解明されておらず、直接証明はまだ行われていない。しかし、このような刺激因子(細胞内)の発現がホルモンによって誘導されたことは、癌の発育、成長に関与すると考えられる因子の解明につながり、今後、さらにこの分野の研究の重要性が増すものと思われる。
|