研究概要 |
本研究では、ヒト造血細胞をSCIDマウスのリンパ組織に移住させるモデルを開発することによりホーミング関連分子を明らかにし、癌転移機構解明の一助とすることを目的としている。本年度は、目的とする動的実験系を作製するため、SCIDマウスに移入したリンパ球系細胞の分布及び抗体による分布阻止を検討し、それに基づきヒト腫瘍細胞をホーミングさせるべく操作を加えた。 1)非照射SCIDマウスに移入したマウスT細胞及び胸線腫リンパ球は、胸腺、脾臓、リンパ節に分布することがflowcytometryによる解析で明らかとなった。その分布の割合は、抗VLA-4或いは抗LFA-1により約50%減少し、両分子がホーミングに関与することが判明した。なお、未熟型Bリンパ腫はリンパ系組織への分布が検出されなかった。一方、ヒト末梢血T及びB細胞或いはヒト腫瘍細胞(K562,HEL,HL60,Jurkat,Raji,Doudi)をi.v.及びi.p.投与し経時的に分布を検索したが、10週間目までにはリンパ系組織、肺、肝のいずれにも分布が認められなかった。末梢血及び腫瘍細胞は、K562(VL-3^-VLA-4^-LA-6^-LFA-1^-CD26^-CD45RA^-CD27^-CD29^-CD34^-VLA-5^+)を除いて少なくともLFA-1或いはVLA-4を発現しているので、ヒト接着分子はマウスの対応リガンドには結合しないと結論された。 2)接着分子のホーミング機能をさらに検討するためには、ホーミングしないヒト腫瘍細胞にマウスのそれら分子を発現させて、特定領域へ分布させる系が必要である。そこで、もっとも接着分子発現の少ないK562にマウスVLA-4と昨年単離したDPP1Vを発現させるため、VLA-4を構成しているα4とβ1及びDPP1VのcDNA各々に発現ヴェクター(BMG-neo)を連結したDNAを構築し、細胞内導入をした。今後これらトランスフェクタントをSCIDマウスに移入し、分布を検索する予定である。
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