研究概要 |
超音波の抗腫瘍作用及び薬物との併用による効果増加について照射条件の検討,作用機序解明,動物治療実験への適用について本年度の計画を実施した。そして,in vitroのsarcoma180腫瘍細胞を使用した殺細胞実験では,フォトフリンIIが超音波照射により活性化し,顕著に抗腫瘍効果を生ずることを見いだした。AH130固形腫瘍治療実験においてもフォトフリンII併用が超音波の抗腫瘍効果を大きく増強することを確認した。音響化学的なフォトフリンIIの抗腫瘍活性化に関与している活性酸素種を同定するために,活性酸素消去剤をsarcoma180細胞浮遊液に添加した。超音波単独照射とフォトフリンII併用による殺細胞作用は一重項酸素の消去剤であるヒスチジン添加により抑制されたが,他の活性酸素種消去剤添加では影響を受けなかった。この実験から,超音波によるフォトフリンIIの抗腫瘍効果の増強では一重項酸素がおいて大きく関与していることを確認した。またこの増感における活性酸素の生成を,電子スピン共鳴(ESR)を用いた2,2,6,6tetramethylpiperidine,からの4oxoTEMPO産生測定より物理化学的に同定した。フォトフリンII共存下で超音波による4oxo-TEMPO生成量は増加した。この増加分に対するヒスチジンの阻害効果から一重項酸素の関与が大きいことが示唆された。さらに担癌ラットに対する一重項酸素の消去剤であるトリプトファン投与が,フォトフリンII誘導体と超音波併用の抗腫瘍効果を消失させたことから生体での抗腫瘍効果においても一重項酸素が関与していることを証明した。
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