本研究は、開発のめざましい都市化域で多発している斜面崩壊問題を取り上げ、その要因である豪雨の予知と物理的プロセスを考慮した崩壊過程の解明を結合させ、危険度の予測と避難の意志決定を図るエキスパートシステムを開発しようとしたことである。 気象・水文観測網(気象衛星、レーダ雨量計、テレメータ、アメダス等)が発達し、現在の気象・水文情報が即座に入手できるようになってきた。災害の発生はその時間・場所は異なるが、物理的な条件(気象学、水文学、水理学、土質力学)からの多数の類似点があり、過去の事例やシミュレーションによる要因抽出が災害防止の大きな資料となることは言うまでもない。ここで得られた成果を要約すると以下のようになる。 (i)ファジイ推論を用いて豪雨災害の類似性より天気図から総降雨量を推定した。気象条件より災害発生の可能性を求め、予備情報とした。 (ii)ニューラルネットワークを用いてレーダ量の予測を行い、短時間での降雨量推定を可能とした。 (iii)確率有限要素法を用いて飽和ー不飽和流出モデルを定式化し、不確実な斜面勾配、土壌係数、降雨量の下での斜面崩壊の危険度を算定した。 (iv)ニューラルネットワークを用い入手可能な情報を利用して斜面崩壊の危険度算定を行った。危険度に基準を与えると、避難の開始の意志決定が行える。 以上のように、本研究では、斜面崩壊の物理モデルの定式化とニューラルネットワーク、フィジイ理論などの人工知能手法との結合を計り、知識の蓄積、情報の処理とリアルタイムでの防災対策を提示したものである。
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