本研究では、10m水深の海域の埋立は既に完了し、さらに大水深で大規模の人口島の計画が立案されつつある大阪湾を対象にして、埋立の進捗に伴って潮流系や残差流系はどのように変化するのか、また、高潮災害がどのように発生するのかを検討した。研究成果を分担別に以下に示す。 (1)開発済みの水深方向に積分した二次元有限要素法数値モデルを用いて、埋立の進捗にともなう大阪湾の潮流系ならびに潮汐残差流系の流動特性を明らかにした。 (2)高潮災害の実態を明らかにするために、従来から用いられている水深方向に積分した平面二次元レイノルズ方程式を差分化して数値実験を実施した。高潮の数値実験に当たっての問題点は海上風の風速分布ならびに底面せん断力の的確な評価と、複雑な地形形状の表現である。この二点に焦点を絞って、第二室戸台風コースのモデル台風を想定して高潮の検証計算を実施した。数値実験はまず播磨灘と室戸岬を含む3kmメッシュの広範囲の計算と、明石海峡西部から友ヶ島水道南部に境界を定めた1kmメッシュの狭範囲の潮汐を含む高潮計算である。実測値との比較、検討より、適用したモデルの妥当性が確認ができた。 (3)次に、IPCC報告で地球温暖化による気温上昇、海面上昇が2070年までにそれぞれ3.5℃、45cmと予測していることから、地球温暖化の大阪湾の高潮災害に及ぼす影響を検討した。第二室戸台風の気圧降下や台風の規模を変えた数値実験を実施して、その影響を定量的に評価した。
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