研究概要 |
自動車の排気ガス等、分散型汚染の人体影響を調べる場合、多人数の健康診断は実現性に乏しい。そのため自記式アンケートによる調査に頼らざるを得ないが、季節等の影響や再現性などについて検討が必要である。本研究では季節を変えて繰り返し同一集団に行われたアンケート調査の一致性やこれに影響する要因の検討をした。 宮城県南の小郡市の市街地に居住する40歳以上の住民約8800人について自覚症状・既往症そして食習慣・飲酒・喫煙さらに健康診断の受診状態のアンケート調査を、1988年2月、9月および翌年2月の3回行った。 各回毎の有効回答数は7千人台で、3回全てに回答した有効回答数は5,759人(男2,638人、女3,121人)であった。3回回答した集団(3回群と2回以下の集団(2回以下群)の回答内容を、第一回アンケートで比べると、自覚症状は男女とも2回以下群の有症率が3回群に比べて高い。これは何かの症状を持っていることがアンケートに答える動機にはならないこと、繰り返しアンケート調査を行って環境の人体影響の変動を長期的に観察する場合、環境の影響か回答者の変化によるものかの注意が必要であることを示している。既往症ではこの現象は見られなかった。 3回群では、集団検診への受診率はわずかだが高く、飲酒率・喫煙率は男女とも低かった。この結果はアンケートに毎回回答してくれた人は健康に気をつける傾向にあり、それが自覚症状の有症率を低下させている可能性を示している。 3回群の3回それぞれでの回答の一致性と再現性について見ると、自覚症状は季節の変動を受け易く、集団としての有症率が同じでも個人としてみると再現率は低く、既往症の場合、高血圧や糖尿病そして痛風など常に意識にのぼるものは再現率が高く、虫垂炎・肺炎など一過性の場合は再現率が低い傾向が見られた。
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