紫外線損傷の修復とそれにともなう突然変異頻度の変化を、アカパンカビを材料に用い解析した。M・luteusのエンドヌクレアーゼを用いてチミンダイマーの除去について調べたところ、紫外線高感受性を示す突然変異株のうちダイマーの除去に関して異常を示したのはmus-18株のみであった。この株の紫外線感受性は他の変異株にくらべてあまり高くはないが、紫外線誘発突然変異頻度はきわめて高い。この性質がチミンダイマー除去の欠損に由来しているのかどうかを確認するため、TC(6-4)光産物の除去、および遅延光回復の効果を調べた。チミンダイマーとTC(6-4)光産物のそれぞれに特異的な抗体を用い、DNAとの結合量を調べたところ、mus-18株はチミンダイマーだけでなく、TC(6-4)光産物の除去にも異常を示した。したがって紫外線感受性や突然変異誘発の原因を特定することは今回の実験ではできなかった。しかし、遅延光回復が生存率におよぼす効果はmus-18株の場合液体保持を12時間おこなった場合にもみられることから、チミンダイマーの存在が生存率に大きく影響していることが考えられる。一方、紫外線照射直後の光照射により、mus-18株の生存率は野生株並に回復するが、突然変異率は野生株のレベルまでは低下しないので、突然変異の誘発にはダイマー以外の損傷も関わっていると思われる。今後はmus-18遺伝子のクローニングと、それを使用してmus-18蛋白質の精製をおこない、in vitroにおけるmus-18の働きを明らかにしていくつもりである。
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