6価の鉄の酸素酸塩である鉄酸カリウムを用い、水の殺菌・消毒剤としての検討ならびに、微生物分解しにくい新規化学物貭の酸化処理剤としての検討を行った。 殺菌・消毒剤としては、大腸菌を対象とした実験の他、ウイルス指標としてバクテリオファージを用いた検討を行った。バクテリオファージは微量の鉄酸カリウムにより不活化され、大腸菌に対する濃度より更に低い濃度でも十分な効果が得られたことから、鉄酸カリウムは特にウイルス不活化剤として効果的に使用できると考えられた。またこのウイルス不活化に及ぼす種々の水貭因子の影響の検討から、ウイルス不活化のメカニズムに関する考察も行った。鉄酸カリウムは鉄酸イオンが不活化効果を示すのではなく、その分解過種で生じる中間体が強い不活化効果を示すと考えることが出来、水中の緩衝能は、この中間体の生成にはマイナスに作用するが、一方生成された微量の中間体の存在時間を長く保つ効果も持ち合せいてることなどが推察された。 新規化学物貭の酸化剤としての検討を試みた。数種の塩素化フェノールを対象とし、酸化実験を行ったところ、鉄酸カリウムによりこれらの化合物そのものの濃度は減少したが、脱塩素は必らずしも生じている訳ではないことも明らかとなった。酸化剤としての特性は不明な点も多く今後はより基本的な研究を行うことが、結果として工学的な応用に際し有効な指摘を行えると思われる。従来使用されている多くの酸化剤との比較により、鉄酸カリウムの特性が明らかになるはずであるが、本年度はそこまで実験を行う時間的なゆとりはなかった。 このように、酸化剤としての特性の把握は十分ではなかったが、ウイルス不活化剤として非常に効果的であることが明らかとなったのは大きな収穫である。水貭によっては塩素よりはるかに効果的であろう。
|