本研究では、河川から地中へ、あるいは地中から河川へと、河川水と地下水の相互交換を繰り返す過程で、自然浄化が行われていることに注目した。この現象を応用し、河川水と地下水の循環を河川の横断方向において人為的に速めて相互交換の繰り返しを増すことにより、汚濁河川の浄化を諮ることが可能と考えられるが、本研究では特にその前提となる対象河川の現地条件について検討することを目的とした。 埼玉県西部の不老川中流域をモデルとして、河川及び周辺地下水について長期の水文観測と各種調査ならびに室内浸透ろ過実験を実施した。不老川は下流方向にかけて、所々で流量減少、すなわち、河川水の漏水がみられる。漏水量は河川沿いの地下水水質に影響を与え得る水量であり、この影響は河川水と河川沿い地下水の水質の同一傾向、時間変動の類似性などにより確認された。 河川水は地下浸透ならびに地下水として流動する間に吸着、分解などにより浄化されるが、その程度は水質項目によって異なった。亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、陰イオン界面活性剤は特に目立って減少した。前者の2項目は河床下の漏水過程の段階ですでに河川水よりも減少していることが認められ、脱窒が河床下の浅い位置で行われていることが示唆された。 主として、現地観測結果の解析より、漏水浸透過程で浄化効果の認められる水質項目について、河川近くで地下水を揚水し、河川に還元することによって、河川の浄化を諮ることは可能であるという結論を得た。
|