日本の自動車対策は一つの矛盾を抱えている。一方では、地球環境間題を契機として自動車利用を〈促進〉する機運が高まっており、他方では、駐輪場整備が巨大化するにつれ自転車利用を〈抑制〉しようとの意向が強まっている。この矛盾を解くカギの一つがレンタルサイクル方式(RC方式)の導入であろう。RC方式とは会員か共有する有料の貸し自転車システムである。自宅から駅への移動と駅から職場などへの移動とで1台の自転車を共用し、駐輪場の残る台数を減らすのがその狙いである。 神奈川県平塚駅(1980年)での実施例はわが国最初のRC方式であり、実物第一号を造ってそのイメージを具体化した。埼玉県上尾駅(1983年)の実施例では利用率(=契約者数/自転車台数)が150%を越え、条件さえ揃えば理念どおりのRC方式を実現させうる可能性を示した。練馬区大泉学園駅(1989年)での実施例は、土地の有効利用にも効果があることを実証した。こうした実践を通して、RC方式の成功条件が次第に明らかになりつつある。 今後の研究課題を整理しておきたい。(1)用語や概念を整理してRC方式を正確に定義すること。(2)全国での実例を収集して、RC方式の成功条件を検討すること。(3)駐輪場の有料化や放置規制の強化などの現行対策との関連を明確にすること(これわ軽視するとRC方式は単なる奇抜なアイデアと見られやすい。)(4)簡便て実用的な計画手法を体系化すること。(5)民間経営に向けて採算性を詳しく吟味すること。
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