研究概要 |
母乳を介しての乳児への影響を検討するための第一段階として、少量の試料からPCDDs,PCDFs,Coplanar PCBs(Non-ortho PCBs,Mono-ortho PCBs)を一斉分析する方法を確立すると共に、母乳中のこれら化学物質の動態を検討した。 一人の母親の母乳を出産後6週間目から26週間目まで経時的に採取し、母乳脂肪中のPCDDs,PCDFs,Non-ortho PCBs,Mono-ortho PCBs及びPCBsを経時的に分析した。母乳中のPDDDs,PCDFs,Non-orthoPCBs,Mono-ortho PCBs及びPCBs濃度(fat basis)はそれぞれ1059ppt〜363ppt,91ppt〜48ppt,626ppt〜324ppt,115ppb〜53ppb,460ppb〜239ppbとなり、出産後の期間により変化した。 PCDDs,PCDFs,Non-ortho PCBs及びMono-ortho PCBsの各濃度を2,3,7,8-TCDD毒性相当量(TEQ)に換算すれば、PCDDsは29ppt〜21ppt,PCDFsは18ppt〜12ppt、Non-ortho PCBsは50ppt〜32ppt,Mono-ortho PCBsは115ppt〜75pptとなり、出産後の期間により変化した。また、総TEQ濃度(PCDDs,PCDFs,Non-ortho PCBs及びMono-ortho PCBs)は212ppt(6週間目)〜145ppt(26週間目)で、20週間で35%の減少が見られた。一方、総TEQに占める各化合 物の割合(TEQ組成)は6週間目で13%(PCDDs),8%(PCDFs),22%(Non-ortho PCBs),57%(Mono-ortho PCBs)となり、TEQ組成においては経時的な変化は認められなかった。また、1973年〜1991年の19年間の母乳(55〜242試料/年)を各年度毎に等量混合して分析試料(プール母乳)とし、このプール母乳中のPCBs及びNon-ortho PCBsを分析した。PCBs及びNon-orthoPCBs濃度(fat basis)はそれぞれ1362ppb(1973年)〜367ppb(1991年)、623ppt(1973年)〜197ppt(1991年)となり、経時的に減少した。また、Non-ortho PCBsの各濃度を2,3,7,8-TCDD毒性相当量(TEQ)に換算すれば、54ppt(1973年)〜17ppt(1991年)となり、19年間で約1/3に減少した。 上記の結果を踏まえて母乳中のダイオキシン関連物質の免疫毒性評価(母乳の安全性)を実験動物を用いて実験中である。
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