電力需要と電源の遠隔化、定電力負荷の増加などにより、電力系統は運用が難しくなってきている。そして、安定度、電圧安定性、都市部の供給力不足等、様熊な問題が生じている。超電導磁気エネルギー貯蔵装置(SMES)は有効電力、無効電力を独立かつ高速に制御することができるため、多目的の小規模SMESを設置することによってこれらの間題の解決に寄与することができるものと期待される。 本研究ではSMESによる電力系統安定度(有効電力の安定度)および電圧安定性(無効電力の安定度)の改善を考えた。そして、双方に効果のある設置場所について、簡単な2機6負荷モデル系統および実規模に近い55母線系統を用いて、シミュレーションによって検討をおこなった。その結果、以下のことがわかった。 系統安定度については、想定する事故にもよるが、発電機に近い母線にSMESを設置した場合に効果が大きくなる。一方、電圧安定性については、一般に発電機から離れた母線にSMESを設置した方が効果は大きくなる。 このように、系統安定度と電圧安定性では最も望ましい設置場所は異なっている。しかし、系統安定度と電圧安定性の双方にある程度以上の効果がある設置場所(準最適な設置場所)も存在することが今回の検討によって明らかになった。 このことによって、制御の自由度の大きい装置であるSMESを単一目的でなく多目的に効果的に利用することが可能であることが示された。
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