研究概要 |
本研究課題では、有機分子の吸エネルギー的光異性化反応に基づく光エネルギーの化学的変換貯蔵系、特に、物質において可逆的な系の開発を目的としてきた。平成4年度では、新規な光エネルギーの変換貯蔵系の探索、さらには、貯蔵されたエネルギーの開放形態の多様化をもくろんだ研究を行い以下の成果を得た。 1.新規な光エネルギー変換貯蔵系 (1)7,8,9-トリ-t-ブチル-5,12-ナフタセンキノンならびに1,2,3-トリ-t-ブチル-5,12-ナフタセンキノンを設計合成した。これらはともに500mmにおよぶ吸収を持ち、太陽光を有効に吸収し、光照射によりそれぞれ高エネルギー異性体であるバレン体およびヘミ-デユワー体に定量的に異性化する。 (2)[6]-1,4-シクロファンアントラキノンを設計合成した。この化合物を光照射によりベンジルメチレンからカルボニル酸素原子への光水素移動による異性化をおこし、高エネルギー生成物を可逆的に与える。この反応系について、ナレ秒レーザー分光法により反応機構を詳細に検討した。 2.貯蔵エネルギーの開放形態の多様化 本可逆系では歪エネルギーを貯蔵エネルギーのうちわけに選んでいるが、その開放形態の多様化をはかって、歪化合物の熱的異性化において、非断熱的に励起状態の生成物を与えるような反応系について検討した。具体的には、デユワーベンゼン誘導体の芳香化を選び、デユワー安息香酸誘導体、ジブロモアントラセンにデユワーアセトフェノンを連結したもの、ならびにデユワーベンゾフェノンを合成しそれらの熱異性化を調べたところ、デユワーベンゾフェノンにおいて励起ベンゾフェノンを与えることを見いだした。
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