研究概要 |
アモルファス母相からナノ金属粒子が均質析出する合金においては,このナノ母金属粒子が析出する温度域で諸特性が大きく変化し,機能特性が発現することを見出した。その特性として,析出誘起塑性,自己変形抑止効果,吸振特性,負の熱膨張特性,耐熱強度特性などを上げることができる。以下にこれらの機能特性について述べる。たとえば,結晶化においてナノAl粒子が析出する組成のアモルファス単相合金を析出がおきる温度域で変形すると,析出に伴う局部変形熱の導入により局部的に温度が上昇する。その結果,この領域において優先的にナノAl粒子が析出し,この領域が強化される。その結果,この領域ではその後の変形を行うことが出来なくなり,変形帯は他の新たなサイトに移動することになり,結果として大きな塑性伸びが得られ,析出誘起塑性が発現することになる。また,この現象は,変形域での優先析出によりその後のその場所での変形を抑止することを意味しており,自己変形抑止効果を有しているといえる。また,大きな析出誘起塑性の発現は,その温度域での変形にはより大きなエネルギーが必要であることを表わしており,吸振特性を有している。さらに,アモルファス相からナノAl結晶相が析出する時,結晶相の熱膨張係数がアモルファス相よりも小さいために,析出時には負の熱膨張係数が広い温度域であらわれることになる。ナノAl粒子は転位などの欠陥を含まない完全結晶構造を有しており,そのために高温域においても高い強度を持ち,耐熱強度が表われることになる。 本年度の研究で見出されたこれらの新現象は,Al基合金のみならず,Mg基,Ni基およびFe基アモルファス合金においても見出されている普遍特性であり,今後これらの特性を利用した新機能材料が実用化される可能性はきわめて高いものと予想される。
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