研究概要 |
近年、エネルギー関連産業や化学工業などの先端技術分野では、高耐熱・耐食機能を備えた構造用材料の開発が重要課題となってきている。しかし、これまでの耐熱・耐食材料の開発は、経験の積み重ねとカンに頼って行われてきた。これた現在の表面理論が材料の持つ耐熱・耐食機能を予測できるまでに至っていないことに起因している。本研究では、分子軌道法を用いて、合金および表面の電子構造を計算し、耐熱・耐食機能を理論的に明らかにすることを目的とした。本研究では特に、金属および合金が水溶液中で腐食する際に起こる水素発生反応に注目し、反応の起こり易さと表面電子状態との関連について検討し、以下の成果を得た。 1.チタン合金の硝酸水溶液中での腐食反応は、局部電池モデルを用いて説明できる。すなわちTiのアノード反応(Ti→Ti^<2+>+2e^-)とカソード反応(2H^++2e^-→H_2)は、カソード部のフェルミエネルギー準位(Ef)が高く、かつEfでの電子の状態密度が大きいときに起こり易いことがわかった。これはチタンにIr,Pt,Ru,Rh,Pd,Niなどの合金元素を入れた場合に対応している。このとき、表面の不働態化が促進され耐食性が増す。 2.チタンを含め遷移金属基合金の水素発生反応の難易を表す水素過電圧は、一定の法則に従って変化していることがわかった。すなわち、母金属より電気陰性度の小さい合金元素を入れても水素過電圧はあまり変化しないが、電気陰性度の大きな合金元素を入れると、合金元素が純金属の場合に示す水素過電圧特性が現れる。このことは母金属と合金原子間の電荷移行によって定性的に説明できる。水素の発生は、電荷移行によって電子が過剰になった原子サイトが起こるわけである。 これらの成果を基にして、新してチタン合金、ならびに水素発生電極材料(Ni-Mo系焼結合金)を開発した。
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