研究概要 |
本年度の主な成果はm-phenylenebis(phenylmethylene)(m-PBPM)の正イオンについて微細結合定数の精密な再測定を行ない、前回報告した値(D=0.1300cm^<-1>,1E1=0.0045cm^<-1>)を修正したこと、およびプロトタイプとしてのm-PBPMの正負イオンについての研究からの発展としてカルベンユニットが3個のb穂nzene-1,3,5-tris(phenylmelene)(BTPM)の正負イオンについての研究に着手したことである。まづm-PBPMの正イオンについてはXバンドESRスペクトルのシュミレーションを繰り反した結果、2種類のコンフォーマーI,IIがほぼ1対1の割合で混在していると解釈できることが明かになった。この2つのコンフォーマーの結合定数はD=+0.135cm^<-1>,1E1=0.0040cm^<-1>およびD=+0.1285cm^<-1>,1E1=0.0055cm^<-1>と異なっているが近似的にはトランス・トランス型構造であること、IとIIの差は例えばフェニルリングの非平面性に僅かながら有意の差があると解釈して矛盾しないことが分かった。 次にBTPMについてはそのアニオンのESRスペクトルの測定に成功した。77KでのESRスペクトルはスビン多重度4の高スピン状態と見られる。しかしながらBTPM系では3個の窒素分子が脱離して目的のトリカルベンになったもののアニオンを検出している可能性の他に、一旦生成したトリカルベン内の1個のカルベン基がマトリックス分子からの水素引き抜きを起こして実質的にジカルベンに変わった可能性、および光窒素脱離過程において窒素の一つが脱離しなかった可能性も杏定できないため、現在これらの可能性の検証を行なっている。
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