本年度の主な成果を以下にまとめる。 1)気相法によるC_<60>単結晶の作製 従来からの溶液法による単結晶に加えて、より良質な単結晶を気相から成長させるために、まず特殊な電気炉を作製し、それによって物性測定に使用できる単結晶を得ることができるようになった。 2)単結晶C_<60>を用いての電荷移動度の測定 溶液法単結晶について、パルス光励起による電荷移動度の測定を行った。正孔に対してその移動度の温度依存性を測定した結果、分子の回転状態(固体中での)に依存した変化が得られた。気相成長単結晶についても測定中である。 3)ナトリウムあるいはセシウムをドープしたC_<60>単結晶の導電性 これまでその物性が明らかになっていない標記のドーピング結晶について抵抗率及び熱電能の測定を行った。ナトリウムの場合は室温から約200Kまでの間は金属的振舞を示すが、それ以下の温度では絶縁的振舞を示す。これは、2Na_3C_<60>→Na_2C_<60>+Na_4C_<60>なる不斉化反応が生ずるためと思われる。一方、セシウムでは、むしろ低温域(100K以下)で金属相の安定化がみられた。より詳しい研究が必要である。 4)C_<70>へのドーピングについて C_<70>(高純度)粉末に、カリウム又はルビジウムをドープしてSQUIDによる磁化率の温度依存性を測定した。ドーピング条件をいろいろ変化させても、2K以上の温度で超伝導の存在は認められなかった。
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