野生メダカの遺伝子を近交系メダカに導入し、メダカのゲノム解析に応用する試みとして、本年度は性染色体連関DNAマーカーの探索を行った。材料として用いた系統は、南日本集団由来の近交系Hd-rRと北日本集団由来のHNIである。3年前にHd-rRを遺伝行背景にHN1由来のY染色体を導入したコンジェニック系統の作成を開始し、本年戻し交配10世代が得られた。 近交系HO5のランダムゲノムライブラリー(0.5-2kb)を作成し、これらをプローブとしてサザン分析を行ったところほとんどの単一コピーDNAでHd-rRとHNIとの間で多型がみられた。Yコンジェニック系統を用いてこれらの中から性に連関したクローンを探索し、pHO5-5とpHO5-110の2つのクローンを得た。 pHO5-5(約1.8kb)はメダカ属内で共通に保存されているユニーク配列で、これをプローブとすると製限酵素Bg1II、DraIでHd-rRの雌雄を、HindIIIでHNIの雌雄を判別できた。この結果は、近交系のX、Y染色体の間で塩基配列の差があることを示し、形態的に未分化な魚類の性染色体の進的位置という観点から興味深い。 pHO5-110(498bp)はメダカ属の両腕型染色体グループ内でのみ保存されている中頻度反復配列で、A1a-tRNA様配列を含んでいた。そのレトロポゾン様構造とメダカ属魚類の系統解析との関連で興味深い配列である。 今後こうした方法で性に連関したDNAマーカーの探索を行うことによってメダカの性染色体の同定や構造の解析、さらに性決定機構の解明に役立つことが期待される。また遺伝的路離の離れた近交系の組合せによりDNAナーカー用いたメダカのゲノム解析が進むことが期待される。
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