先史モンゴロイド集団の拡散と適応戦略

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04208103
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 赤澤 威 東京大学, 総合研究資料館, 助教授 (70013753)
• 研究分担者: 大塚 柳太郎 東京大学, 医学部, 教授 (60010071) ; 米倉 伸之 東京大学, 理学部, 教授 (30011563) ; 杉田 繁治 国立民族学博物館, 教授 (40026042)
• キーワード: モンゴロイド / 日本人 / アメリカンインディアン / 人種・民族 / 遺伝 / アイソトープ / 最終氷期 / 古環境

研究概要

概要
モンゴロイドの出現とその後の移住・拡散に関する問題を、考古学、自然人類学、人類遺伝学、文化人類学、医学、自然地理学、地球化学、情報工学等、およそ当問題にかかわるすべての分野にまたがる約100名の専門家が協同で研究してきた。当該年度はプロジェクト最終年度にあたり、これまでに、それぞれの分野それぞれの地域であげられてきた成果を整理し、相互に整合性を検証するとともに、それらを束ねた総合的なシナリオを執筆する方策を検討した。
具体的な論点と成果
1.モンゴロイドの誕生について
人種特徴によってグルーピングされるモンゴロイド系諸民族の成り立ちや系統関係を過去にさかのぼって探る科学としては集団遺伝学が最も優れている。本プロジェクトの遺伝学メンバーによりアメリカ大陸先住民がアジア起源であるという“通説"がミトコンドリアDNA遺伝子及びHLA遺伝子ハプロタイプにより世界で初めて検証された。
アジア、アメリカ、太平洋地域の先住民族が遺伝的に極めて近縁で、アフリカのニグロイド、ヨーロッパのコーカソイドとは別グループのモンゴロイドとしてグルーピングできることを明示した。
2.モンゴロイド系諸民族の形質的・文化的多様性について
モンゴロイドの身体形質、物質装備を含めた文化は他のニグロイド、コーカソイドにくらべ格段に多様であり、それは過去約30,000年前以降のモンゴロイドの移住・拡散にもとづく適応放散の結果である。併せて、人類の出現が4百万年〜5百万年前、北京原人の出現が50万年前という人類史の中で、モンゴロイドの移住・拡散その後の適応放散現象がいかに最近の出来事であるかが明示される。
成果のまとめについて
過去4年間の成果を総合的にまとめ学界及び社会一般に公開・公表し、併せて後続研究の基礎的素材として記録に留めるために下記の総合的な成果刊行を平成5〜6年度にかけて実施する。
1.シリーズ「モンゴロイド」全5巻、東京大学出版会
2.単行本「モンゴロイド」平凡社

研究成果

• [文献書誌] K.Ochiai: "The Other Visualized:From Drawings to Photographs" The Other Visualized:Depoctions of the Mongoloid Peoples. 1-28 (1992)
• [文献書誌] S.Sasaki: "Siberia" The Other Visualized:Depictions of the Mongoloid Peoples. 91-138 (1992)
• [文献書誌] K.Ochiai: "The Americas" The Other Visualized:Depictions of the Mongoloid Peoples. 139-210 (1992)
• [文献書誌] T.Funabiki: "The Pacific" The Other Visualized:Depictions of the Mongoloid Peoples. 211-260 (1992)
• [文献書誌] T.Akazawa: "Les Premierrs Riziculteurs du Japon" La Recherche. 218. 142-149 (1990)
• [文献書誌] T.Akazawa et al: "The Neanderthal Remains from Dederiyeh Cave,Syria" Anthropological Science. 101(3). 1-21 (1993)
• [文献書誌] T.Akazawa et al(eds.): "The Evolution and Dispersal of Modern Humans in Asia" Tokyo:Hokusensha, 660 (1992)
• [文献書誌] 赤澤 威他(編): "アメリカ大陸の自然誌(全3巻)" 東京:岩波書店, 774 (1992)