研究課題/領域番号 |
04210107
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
湯本 昌 東京大学, 医学部(医), 助手 (90009978)
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研究分担者 |
垣見 重雄 日本大学, 医学部, 助手 (40060165)
小林 紘一 東京大学, 原子力研究総合センター, 助教授 (70108637)
山本 学 東京都立立川短期大学, 食物学部, 教授 (50114707)
木村 孝一 東京理科大学, 理工学部, 教授 (70001039)
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キーワード | 酸性雨 / アルツハイマー病 / アルミニウム / 地球環境問題 / 老人性痴呆症 / 地球温暖化 / オゾン層破壊 / 神経毒性 |
研究概要 |
近代科学文明は、飛躍的な経済成長と生産力の向上をもたらした一方で、温暖化やオゾン層の破壊、酸性雨などの地球的な規模の環境破壊を急速に進行させている。現在にいたるまで、地球環境破壊の影響に関する研究は主として、自然や産業を対象とし、人間の生存や健康への影響は、ごく僅かしか考慮されていなかった。 1 地球の環境破壊が人間の健康や生存に及ぼす影響の予測と解析 温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨などの環境破壊が、人間の健康や生存に近い将来およぼす影響に関して具体的に予測・解析した。 我々は、1992年6月「環境と開発に関する国際会議」(地球サミット)の開催に際して「地球を考える」(竹内啓,湯本昌編)を三田出版会より刊行し、重点領域研究の研究成果を踏まえて提言を行った。 2 アルツハイマー病(老年期痴呆症)の病因の解明 酸性雨は、地殻からアルミニウムを溶け出させ、樹木を枯らし湖沼の魚を死滅させる。また、飲料水中にアルミニウムが多量に含まれる地域では、この疾患の発病率が高いことが報告されている。 我々は、健康なラット(ネズミ)にアルミニウムを皮下注射し、PIXE法(荷電粒子励起X線分析法)でアルミニウムを分析した。その結果、脳や脳の細胞の核にアルミニウムの侵入が証明された。また、アルツハイマー病の患者の脳や脳細胞の核にもアルミニウムの蓄積がPIXE法で認められた。さらに、注射後75日のラットの大脳皮質を鍍銀法で観察すると、樹状突起の数が減り、樹状突起に付着しているスパイン(シナプス)の数も著明に減少していた。この所見はアルツハイマー病患者の脳の病理学的な特徴と完全に一致する。 今回の実験結果は、アルミニウムが脳や脳の細胞の核に蓄積し、その結果、アルツハイマー病を引き起こす可能性を強く示している。
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